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「背中を見て覚えろ」はもう古い?XRでベテラン技術者の継承問題を解決!

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「背中を見て覚えろ・・・ 」

「何でも教えてもらえると思うな!」

厳しい職人の世界において、技術は師匠から教えてもらって習得するのではなく、師匠と長い時間を過ごす中で身につけ、磨いていくものかもしれません。

でもそれだと、なかなか熟練の技術が後継者に継承されず、貴重な技術がなくなってしまうのでは・・・?

そんな継承問題の解決策として注目されているのが「XRを用いた技術継承」です。XRを活用することで、熟練の技を目の前に映し出したり、XRを通して体験してもらうことで、技術継承に役立つ可能性があると考えられています。

XRが技術継承で注目される理由

日本の製造業においては、技術者の確保にいくつかの課題があります。その課題を解決するために今、モノづくりの現場で技術継承にXRが着目されています。

ベテラン技術者の高齢化

ベテラン技術者の高齢化や引退は企業にとって切実な課題です。2022年から団塊世代が75歳に到達し始め、2025年には75歳以上の後期高齢者は人口全体の18%を占めると予想されています。

ベテランの技術に頼ってきた企業は、早急に現場の若手に技術を継承していく必要に迫られています。

(参考:我が国の人口について|厚生労働省

技術継承には体験が必要

技術継承には言葉だけではなく、「体験」が必要不可欠です。紙やデータとしてマニュアルのように作業工程が保存されていたとしても、それを読めばこれまでの技術者と同じようなクオリティで仕上げられるとは限りません。

データでは伝えきれない細かいチェックポイントや、聴覚、視覚など五感を使って行われてきたテクニックは「体験」を通してでないと得られないものも多くあります。

その点で、XRはまさに最適な技術継承ツールといえます。

XRデバイスの導入ハードルの低下

XRデバイスは以前と比べて、低価格化しつつあります。もちろん法人向けのハイスペックなXRデバイスともなると、低価格とは言い難い金額のものも存在しますが、一般消費者向けのXRデバイスは少しずつ価格が下がってきています。

どのような技術の継承を実施するか、どれくらいの規模で行うかにもよりますが、コストパフォーマンスの面でも、技術継承においてXR導入は選択肢の一つとなりつつあります。

XRを技術継承に導入するメリット

XRでの技術継承を現場に導入すると、以下のようなメリットがあると考えられます。

臨場感あふれる学習体験

  • 熟練技術のリアルな再現
  • 臨場感のあるタイムリーな指示

XRデバイスを着けての学習体験は、限りなくリアルな体験に近づけることができるとともに、いつでもどこでも現場の臨場感が体験できます。

個人への最適化

  • 時間と場所に縛られない学習
  • 学習のリピート
  • コンテンツのカスタマイズ

学習がしたい人に最適化できる点もXRのメリットと言えます。その人の空いている時間に合わせて学ぶことができ、わからない箇所は何度も繰り返し学びなおすことができます。

企業競争力の強化

  • 作業効率の標準化
  • コスト削減
  • 新技術の迅速な共有と研修

XRを活用して作業の標準化が進めば、課題解決・改善もスムーズに行うことができ、業務コスト削減に大きく貢献します。新技術やハウツーを生産プロセスに導入する際も、XRコンテンツの編集を行うことで時間をかけずに、一気に周知・浸透させることが可能です。

XR技術継承を支援するサービスを紹介

XRを使って技術継承や事業継承を支援するサービス業者も増えています。代表的なサービスを一部紹介し、それぞれの強みや取り組みなどを解説します。

NTT XR Real Support|株式会社NTTコノキュー

NTT XR Real Supportは、NTTドコモが100%出資するXRソリューションカンパニーである株式会社NTTコノキューが提供している「技術伝承」「人手不足」「安全確保」等の課題を解決するMR技術を用いた遠隔支援ソリューションです。

MRを使った遠隔作業支援、空間ポインティング、3Dデータでの業務説明といった、臨場感溢れるユーザー体験は技術継承を強力にサポートしてくれます。マルチデバイス対応という点も大きな魅力で、スマートフォンでもXR体験が可能です。

導入料金の目安:初期費用30万円~、アプリ利用料:2~3万円/月・ID(ユーザー数課金) ※その他デバイス購入等が必要な場合あり

▽NTT XR Real Support公式サイト
https://www.nttqonoq.com/service/real-support/

Faci-L-ite XR Tiny版|住友商事マシネックス×ポケット・クエリーズ

Faci-L-ite XR Tiny版は、住友商事マシネックス株式会社が株式会社ポケット・クエリーズと共同開発した、XRを用いた業務効率化サービスです。MicrosoftのHoloLensを利用した遠隔指導、3Dハンズフリー作業を通じて、人手不足や技術継承などの課題を解決します。

また、音声通信とXRで的確な作業指示を出すことが可能で、ベテラン技術者が遠隔地の作業員にリアルタイムで指示を出す際にも活用されています。

導入料金の目安:お問い合わせ後、お見積り

▽Faci-L-ite XR Tiny版公式サイト
住友商事マシネックス
https://www.smx.co.jp/xr/

ポケット・クエリーズ
http://quantize-world.com/projects/faci-l-ite_xr/

XRコンサルティングサービス|株式会社ビーライズ

株式会社ビーライズは、VR研修や教育シミュレーションに使用されるソフトウェア開発などを行っている企業で、XRコンサルティングサービスとして、メタバース構築支援、XRのビジネス導入のサポートなど、XR(VR/AR/MR)技術をご検討されている企業や組織への戦略的アドバイスや支援を提供するサービスも行っています。

これまでの多様な開発実績に基づき、研究調査〜モックアップ・プロトタイプの開発などもフォローアップが可能で、XR技術の導入に不慣れな企業や組織の方でも、効率的にXR技術の導入を進めることができます。

導入料金の目安:要問い合わせ

▽XRコンサルティングサービス公式サイト
https://berise.co.jp/topics/xr_consulting/

XRを技術継承に用いる際の注意点

XRデバイス、XR教育コンテンツの使いやすさはとても大切です。使い心地が良くないとユーザー離れを起こします。

また、XR教育コンテンツには個人情報が入らないような配慮が必要になります。加えて、肖像権にも注意が必要です。現場作業者の中には自分が映ることを嫌う方もいるかもしれません。事前に確認をとっておきましょう。

導入後も継続的に費用がかかるので、コストパフォーマンスをしっかりと見極めることが大事です。デバイスの劣化に対応するだけでなく、コンテンツのアップデートも求められます。

XRを用いた技術継承の事例

XRはさまざまな業種で技術継承に活用されています。具体的な事例をいくつかご紹介します。

土木構造物の維持管理教育にAR技術を活用|東京メトロ

東京メトロは、新入社員・研修生向けにAR教育アプリを開発しました。ARアプリは、模擬トンネルや橋りょうでの検査業務をリアルに再現します。

点検の精度を高める上で、経験は重要です。ベテランの実践的な手順を安全に繰り返し学べることで、技術継承が効率的に進められるようになりました。

(参考:AR(拡張現実)技術を活用した土木構造物の維持管理教育用アプリの使用を開始しました|東京メトロ

ブドウ栽培VR学習システム|島根県出雲市

出雲市はブドウ産地育成、および保護を目指して新規就農者向けにVR技術の導入をすすめています。ユーザーはVRゴーグルを着用し、バーチャルブドウ園で摘粒作業のトレーニングが実施できます。

VRであれば、天気や季節なども調整でき、農業の1年を凝縮して体験することも可能です。安全性だけでなく、タイムパフォーマンスといった観点からも魅力的です。

(参考:ぶどう栽培VR学習システムの開発|農林水産省

XRでの技術継承には大きな可能性が秘められています。エンターテイメント分野だけでなく、ビジネス分野でのXR活用もますます拡大していくでしょう。

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この記事を書いた人
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