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VRの仕組みとは?VR体験に必要な技術を詳しく解説!

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VRゴーグル(ヘッドセット)をかぶり、ゲームや映像視聴、さらにはフィットネスや仕事までできてしまうVR体験。

こうしたVR体験は、どんな仕組みから実現されているのでしょうか。

本記事ではVRの意味や、VRを成り立たせる複数の技術を解説します。

VRとは|バーチャル空間の中で行う「ほぼ現実」の体験

VR(Virtual Reality、バーチャルリアリティ)は、多くの場合「仮想現実」と訳されます。

仮想現実とは、コンピュータによって作り出された環境を現実のように体験できる技術です。

一般的には、VRゴーグル(ヘッドセット)を装着し体験します。

VRに関する日本の学術研究団体である日本バーチャルリアリティ学会によると、VRが成立する要件として、次の3つを挙げています。

  • 「三次元空間」(≒バーチャル空間)
  • 「リアルタイム性」(現実の時間とVR内の時間がリンクしている)
  • 「自己投射性」(バーチャル空間内に自分がいる実感があること)

また、「Virtual」は直訳すると「実質的に、事実上の」という意味を指すことから、前述の日本バーチャルリアリティ学会を含む専門家たちの間では、VRを「仮想現実」ではなく「人工現実感」「実質現実感」などと訳すほうが適切だという意見もあります。

2025年3月時点では「ほぼ“現実”の体験である」と理解しておくとよいでしょう。

(参考:日本バーチャルリアリティ学会編『バーチャルリアリティ学』|コロナ社、2011

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VRでできることはゲームから日常生活まで多岐にわたる

VRでは、現実でできる多くのことを擬似体験できます

また、ファンタジー世界に飛び込むなど現実では再現不可能な事象の体験も可能です。

現在の主な用途はゲームや動画視聴ですが、ビジネスやフィットネス、コミュニケーションなど幅広い領域で活用されています。

たとえば、Meta QuestのYouTubeアプリでは、複数のユーザーが3Dアバターの姿で同じバーチャル空間に集まり、会話しながらYouTube動画の同時視聴を楽しめます。

VR体験を支える仕組み(1)|立体視を実現する「両眼視差」

VRでは、バーチャル空間やバーチャル空間上のオブジェクトを立体的に表現する必要があります。

両眼立体視:ものが立体的に見える仕組み

人がものを見る際、目は左右違う角度から対象物を見ています。

両目から入った少しずつ異なる映像を脳で合成することで、見たものを立体的に認識します。

このように「両眼視差(両目に映る像の位置の違い)」によって、ものを立体的に捉えることを「両眼立体視」と言います。

VRもこの両眼立体視の仕組みを利用し、左右で異なる映像を表示して、バーチャル空間内の物体を立体的に表示しているのです。

現実の物体を見る場合とVRで3Dオブジェクトを見るときの違い
*輻輳点(ふくそうてん):人が対象物を見る際に左右の眼球が回転し、両目の視線が交差する点

ただし、上図のように、現実で対象物を見る場合と、VRで対象物を見る場合では、厳密にはピント位置が異なります。

現実で対象物を見る場合、実際の物体の位置とピントの合う位置は当然一致しています。しかし、VRの場合、物体の位置は左右それぞれのディスプレイ上の映像の表現によって決まりますが、ピントは常に一定の位置に合います。そのずれによって、目の疲れや映像酔いなどを引き起こしやすくなります。

VR体験を支える仕組み(2)|没入感を実現する3つの技術

VRゴーグルには両眼視差を利用した立体視の技術に加え、没入感のあるVR体験を支える複数の技術が搭載されています。

本記事では、VRゴーグルに搭載されている技術の中から、特に重要な次の3つの技術に注目して解説します。

  • トラッキング技術
  • ディスプレイ技術
  • オーディオ技術

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トラッキング技術|VR体験者の動きを追跡する技術

トラッキング技術とは、VRゴーグルやVRゴーグル着用者の動きを追跡(トラッキング)する技術です。

VRゴーグル着用者は実際に身体を動かしながらVR体験をするため、適切に着用者の動きをトラッキングしないと、体の動きと視界に広がる映像にズレが発生し、体験に違和感が生じます。

そのためVRゴーグル着用者の姿勢や位置をリアルタイムでトラッキングする必要があるのです。トラッキング技術は役割に応じて複数存在します。

主なトラッキング技術にヘッドトラッキングポジショントラッキング、ハンドトラッキングなどがあります。

詳細は以下の記事をご覧ください。

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ポジショントラッキングとは?仕組みと課題を解説【知っておきたいXRの専門用語】
ハンドトラッキングとは?仕組みやできることを解説【知っておきたいXRの専門用語】

ここではさらに、VR体験の没入感を演出する3つのトラッキング技術をみてみましょう。

  • アイトラッキング
  • フェイストラッキング
  • モーショントラッキング

■ アイトラッキング|視線や眼球の動きを計測・追跡する技術

ユーザーの目の動き(視線)をトラッキングする技術です。

トラッキングデータを基に自分の目線とアバターの目線を合わせたり、バーチャル空間内でのメニュー操作ができます。

アイトラッキングが搭載されているデバイスの代表例として、Apple Vision ProPlayStation VR2が挙げられます。

■ フェイストラッキング|人の顔の動きや表情を追跡する技術

ユーザーの表情や口の動きをトラッキングする技術です。

トラッキングしたデータを基に、VRゴーグル着用者の表情や口の動きを、アバターに反映できます。

フェイストラッキングに対応しているデバイスの代表例としてはHTC VIVEシリーズが挙げられます。

ただし、HTC VIVEシリーズの場合、VIVE フェイシャル トラッカー(VIVE Focus シリーズ)VIVEフルフェイストラッカー(XRシリーズ)といった、各機種対応の別売りアクセサリが必要です。

■ モーショントラッキング|センサーやカメラを使って、体の位置や姿勢の変化を追跡する技術

ユーザーの身体の一部、または全身の動きをトラッキングする技術です。

トラッキングしたデータを基に、アバターの動きの再現や、特定のポーズやジェスチャーでバーチャル空間内のメニュー操作ができます。

モーショントラッキングの搭載デバイス例としてmocopi(モコピ)ContactTrackが挙げられます。

ディスプレイ技術|鮮明な映像でVR体験の質を大きく左右する技術

ディスプレイ技術とは、その良し悪しによってVR体験の質を左右する、VRゴーグル内の映像表示に関わる技術です。

たとえば、4Kや8Kなどの高解像度の映像を使用することで、目の前にそれが本当にあるかのような現実感が増します。

ディスプレイ技術が影響するものとして、VRゴーグルを装着した際に映像が見える範囲を指す「視野角」やVRコンテンツの「解像度」、映像の滑らかさに関わる「リフレッシュレート」などがあり、VR体験における没入感と大きく関わっています。

詳しい内容については、以下の記事をご覧ください。

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オーディオ技術(空間オーディオ)|VR体験者の動きに合わせた臨場感のある音響体験を実現する技術

VR空間を彩るオーディオ技術の中でも代表的な技術が空間オーディオです。

空間オーディオとは、左右で音を出し分けるステレオ音声だけではなく、VR空間内において、音の発生する位置や距離を再現する技術を指します。

空間オーディオ技術が活用されたVRコンテンツの空間内では、現実世界と同じように、様々な位置や方向から音が聞こえてくる体験ができます。

Meta QuestシリーズHTC VIVEシリーズなどのVR/MRゴーグルでは、空間オーディオを実現するためのソフトウェア開発キット(SDK)が用意されています。

VRデバイスやVRコンテンツの進歩によりVRはより“リアル”に近づく

VRデバイスやVRコンテンツは日々進化しており、より自然で違和感の無い体験に近づいています。

今後更に進化を重ねることで、現実とVR体験の境界線は曖昧になっていくでしょう。よりリアルにVRを楽しめる未来は着実に近づいています。

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