普通のメガネとほぼ変わらない大きさ・形でありながら、大画面での映像視聴やゲームプレイ、音楽鑑賞なども楽しめるARグラス。
しかしそのサイズゆえ、ふだんメガネを使用している人にとっては「メガネの上からARグラスをかけられるのか?」という疑問が出てくるはず。
本記事では、メガネ使用者がARグラスを利用するときの注意点を解説します。
メガネの上からのARグラス使用は推奨されていない
ARグラスを販売している各メーカーはいずれも「メガネ on メガネ」、つまりメガネ着用のままARグラスを利用することを推奨していません(取扱説明書に明確に記載がある製品もあります)。
では、なぜメガネの上からそのままARグラスをかけてはいけないのでしょうか。それには以下のような理由があります。
- フレーム同士がぶつかって邪魔になる
- ARグラスがずれてデジタル表示されているものが見にくくなる
- メガネのぶんだけ目とARグラスのディスプレイの距離が離れ、見え方に影響が出る可能性がある
- ARグラスのレンズ・ディスプレイ部にメガネが当たって傷つける可能性がある
どれもARグラスの利用にとっては問題ですが、これらの問題が生じた結果「快適なAR体験ができなくなる」というのが何よりも大きなデメリットになります。
そこで、ふだんメガネを使用している人がARグラスを利用する場合、専用の対策が必要になります。
メガネ使用者がARグラスを使うために必要な2つの方法
メガネ使用者がARレンズを適正に利用するには、コンタクトレンズに替える以外に大きく以下の2つの対策があります。
- 専用のインサートレンズを使う(遠視・乱視にも対応可能)
- 視力補正機能付きのARグラスを使う(軽〜中度近視の人向け)
インサートレンズと視力補正機能、それぞれの仕組みについて解説します。
専用のインサートレンズを使う(遠視・乱視にも対応可能)
ARグラスの中には、デバイスに追加装着して使用する、視力補正用の「インサートレンズ」に対応している製品があります。インサートレンズのフレームとレンズをそれぞれ購入する形が一般的ですが、一部の製品では、フレームが予め付属しているものもあります(レンズ自体は別売り)。
インサートレンズを使うことで、ふだんメガネをかけている人でも、メガネなしでARグラスを利用できます。
ただし、インサートレンズは万能というわけではありません。インサートレンズには以下のような長所と短所があります。
【長所】
- 使用者個人に最適の度数にできる
- 同一デバイスを特定の複数人で利用する場合、インサートレンズを替えるだけなので手軽
【短所】
- アタッチメントが専用品のため、その製品でしか使えない
- インサートレンズ作成料金が別途かかる
- インサートレンズを作れる場所が限られている
インサートレンズ用の視力矯正レンズは、一部の眼鏡専門店で作ることができます。
たとえば、東京・銀座にある眼鏡専門店「JUN GINZA」は、複数のARグラスメーカーのインサートレンズ公式制作指定店となっており、XREAL Air 2 /Air 2 ProやVITURE Oneなどのインサートレンズを作ってもらえます。
製品によって対応店舗は異なりますので、各製品の公式ホームページなどで確認してください。
視力補正機能付きのARグラスを使う(軽〜中度近視の人向け)
インサートレンズ方式とは別に、製品本体に視力補正機能が内蔵されているARグラスもあります。視力補正機能の場合、ARグラス本体にあるダイヤルを回して見え方を調節可能です。インサートレンズを用意する必要がないため手軽ですが、インサートレンズと同様、視力補正機能にも長所と短所があります。
【長所】
- インサートレンズを別途用意する必要がなく手軽
- イベントなど不特定多数で利用する場合、複数の度数のインサートレンズを用意する必要がない
【短所】
- 複数人で利用する場合、その都度調整をする必要がある
- 対応する度数を超えた視力の場合、視力補正機能で対応できない場合がある
- 乱視や遠視の場合、視力補正機能で対応できない場合がある
- ディスプレイを通さない、レンズ越しの通常の視界には視力補正が適応されない
インサートレンズと視力補正機能では、長所と短所がそれぞれ異なります。ARグラスの性能に加え、メガネ使用者のための視力調整の仕組みがどうなっているかも製品選びの重要な要素のひとつです。
使うならどれ?メガネ使用者でも使い勝手のいいARグラス6種を紹介
ここではメガネ使用者でも使いやすいARグラスを6種類紹介します。
- XREAL Air 2
- VITURE Pro
- Rokid Max
- RayNeo Air 2s
- MiRZA
- Lenovo ThinkReality A3
インサートレンズ式か視力補正機機能かも解説しているので、利用目的や予算はもちろんのこと、どちらの方式かも確認しながら、自分に合ったARグラスを見つけてください。
XREAL Air 2:インサートレンズを使い視力補正が可能
(出典:新商品「XREAL Air 2」10月16日より量販店およびAmazonでの販売開始|XREAL)
XREALの「XREAL Air 2」(税込4万9,980円)は、スマホやゲーム機と接続し、目の前に広がる大画面で映像視聴やゲームが楽しめるARグラスです(製品価格は2024年12月調べ)。
「XREAL Beam」や「XREAL Beam Pro」などの外部デバイスを接続することで、機能を拡張したり接続できるデバイスの種類を増やしたりできます。
XREAL Air 2では、視力調整にインサートレンズを採用しています。また、上位機種の「XREAL Air 2 Pro」や、2025年1月17日発売予定の新機種「XREAL One」には調光機能があり、周囲の明るさに合わせてレンズの透明度を3段階(0%・35%・100%)に変更可能です。
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VITURE Pro:本体の視力補正機能もしくはインサートレンズにより視力補正が可能
(出典:【VITURE】進化した視聴体験がここに。新型XRグラス「VITURE Pro」を発表。さらにGACKTコラボモデルの新色マシュマロホワイトを数量限定で予約受付開始。|VITURE Inc.)
VITUREのARグラス「VITURE Pro」(税込7万4,880円)はグラス本体に視力補正機構を搭載(製品価格は2024年12月調べ)。レンズの度数を片目ごとに0.0Dから-5.0Dの間で調節可能です。
視力補正機構では対応できない強度の近視や、乱視・遠視のユーザー向けには、インサートレンズが用意されています(フレーム・レンズ別売り)。
VITURE Proは他のARグラスと同様、大画面で映像視聴やゲームができるのが長所。3D動画にも対応するほか、レンズの調光機能もあります。また、立体音響システムを利用できるなど、オーディオ面でも高い性能を誇るARグラスです。
Rokid Max:本体の視力補正機能もしくはインサートレンズにより視力補正が可能
(出典:「Rokid Max」「Rokid Station」「Rokid AR Joy Pack」を量販店で販売開始!ビックカメラ各店舗でも順次販売開始予定!|Rokid inc)
RokidのARグラス「Rokid Max」(税込4万9,800円)はVITURE Pro同様、グラス本体に視力補正機構を搭載(製品価格は2024年12月調べ)。左右それぞれ0.0Dから-6.0Dの間で度数調整可能です。視力補正機能の対応範囲を超えるユーザー向けには、別売りでインサートレンズが用意されています。
Rokid MaxはニンテンドースイッチやPlayStation 4 Slim/PlayStation 5などのゲーム機に接続し、大画面でゲームプレイができます。
また、別売りの外部デバイス「Rokid Station」を接続することで、YouTubeやAmazonプライム・ビデオ、Disney+などの映像視聴サービスを大画面で楽しむことも可能です。
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RayNeo Air 2s:インサートレンズを使い視力補正が可能
(出典:RayNeo Air 2s|Amazon)
TCL RayNeoの「RayNeo Air 2s」(319ドル/日本円で約4万9,000円)は、2024年8月に日本でも販売開始されたARグラスです(製品価格は2024年12月調べ)。視力補正にはXREAL Air 2同様、インサートレンズを使用。インサートレンズ用のフレームは製品に同梱されており、レンズ部分のみの購入でインサートレンズを使用可能です。
ARグラスのとしてのRayNeo Air 2sは、大画面での映像視聴などARグラスとしての基本機能はもちろんのこと、そのデザインも注目ポイント。他の製品と比べてスタイリッシュな見た目で、「他の人とはちょっと違うARグラスを使いたい!」という人は検討してみてもよいでしょう。
MiRZA:インサートレンズを使い視力補正が可能
(出典:軽量でワイヤレス、高性能なXRグラス「MiRZA」を発表 ~世界初、スマートフォンと無線接続するAR2搭載グラス、法人パートナー募集も開始~|NTTコノキューデバイス)
NTTコノキューデバイスのXRグラス「MiRZA(ミルザ)」(税込24万8,000円)は、2024年10月に発売されたXRグラスです。視力補正にはインサートレンズ方式を採用しています。購入方法は①別売りのフレームをオンラインで購入し、レンズは正規取扱のメガネ店で購入、②フレームとレンズを同時にオンラインで購入、③法人向けとしてデモ用レンズキットを購入、と複数ありますので公式サイトをご確認ください。
MiRZAは軽量・ワイヤレス・高性能のXRグラスで、ストレスフリーなかけ心地とケーブルレスでユーザーの動きを制限しない使いやすさが特長です。ワイヤレスでありながら現実空間にバーチャルなコンテンツをあたかもそこに存在するかのように表示でき、現実空間とコンテンツをシームレスに楽しめます。
ThinkReality A3:インサートレンズを使い視力補正が可能
(出典:レノボ社製エンタープライズ向けARスマートグラス「ThinkReality A3」の取り扱いを開始|株式会社アスク)
Lenovoの「ThinkReality A3」は法人向け製品で、視力補正にはインサートレンズ方式を採用しています。
ThinkReality A3は映像を大画面表示できるほか、グラス本体内蔵のカメラで周囲の空間認識ができるなど、今回紹介した他製品にはない機能を備えるのも特徴です。
また、ThinkReality A3にはPCとの接続を前提とした「PC Edition」(税込19万2,500円)と、専用スマートフォンと接続する「Industrial Edition」(税込54万4,500円)の2つのラインアップが存在(製品価格は2022年4月発表時点のもの。実売価格は各販売サイト等でご確認ください)。ビジネスでの利用目的に応じて選べます。
インサートレンズも視力補正機能も一長一短。用途や利用人数に応じて自分に合ったものを選ぼう
視力調整の方式の違いに加えて、利用目的や利用する人数、予算やデザインの好みなどに応じて選ぶのがデバイス選びのポイントです。
メガネユーザーの方もARグラスの利用に向けた一歩を踏み出しましょう!