VRと言えば、ゲームや映像視聴が代表的なコンテンツですが、医療現場でも使われています。本記事では「VR治療」とも呼ばれる、医療分野とVRの関係について紹介します。
VRを用いた治療は医療分野で活用されている
VRは医療分野でも活用されています。2020年4月には新型コロナウイルスの影響により、条件付きながら国内で初診からオンライン診療が認められるようになりました。上記を皮切りに、オンライン診療・遠隔診療のニーズが拡大し、関連するテクノロジーであるVRに注目が集まっています。
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VRを活用している代表的な2つの治療分野
VRが活用される代表的な治療分野は、以下の2つです。
- メンタルヘルス分野
- リハビリテーション分野
メンタルヘルス分野
メンタルヘルスの分野では、具体的に以下の疾患に対しVRを用いた治療が進んでいます。
- うつ病
- 恐怖症
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 不安障害
VRゴーグル(VRヘッドセット)を用いて、上記疾患に有効な治療法をVRで実施する形です。例えば、苦手なシーンをVRで再現し、段階的にフラッシュバックを体験させ克服させる技術が医療機関で導入されています
リハビリテーション分野
身体機能や認知機能の改善・回復をめざす「リハビリテーション(リハビリ)」を、VRで実施するサービスが開始されています。
リハビリテーションにおける、VRの具体的な活用方法は以下のとおりです。
- VRゴーグルを着用し、VRで手足を動かすなどのリハビリテーション療法を行う
- VRで実施したリハビリテーションの成果をデータ収集し、治療の進捗を医師・患者で共有する
VRの導入により、リハビリテーションの効率と効果の向上に大きく貢献しています。
VRデバイスを用いた治療がもたらす2つのメリット
VRデバイスを用いた治療がもたらすメリットは、主に以下の2つです。
- 自宅や遠隔地でも治療が受けられる
- 施術できる資格者が少ない病気・症状にも対応できる
自宅や遠隔地でも治療が受けられる
メンタルヘルス治療の場合、VRゴーグルがあれば、病院やクリニックに行かなくても、自宅で治療を受けられます。
例えば、VRを通して医師と患者が健康相談できるサービスがあります。VRゴーグルでバーチャル空間にアクセスするだけなので、病院・クリニックに通わず自宅からでも利用が可能です。
また、病院・クリニックに通わずに済むため、他の患者の目線が気にならない点もメリットです。医師と患者だけで話せるため、周囲に話を聞かれず安心して病状説明ができます。
(参考:【バーチャル健康相談】仮想空間でカウンセリング|株式会社Welcome to talk)
VRを用いた治療事例
VRを用いた治療事例として、以下の4つを紹介します。
- mediVRカグラ / 株式会社 mediVR
- RehaVR / silvereye株式会社
- NaReRu / 株式会社魔法アプリ
- VRうつ病治療システム(仮) / 株式会社BiPSEE
各事例について、以下で詳しく見ていきましょう。
mediVRカグラ / 株式会社 mediVR
(出典:“成果報酬型”リハビリ施設「mediVRリハビリテーションセンター福岡」を福岡市に新規開設|株式会社mediVR)
「mediVRカグラ」は、VR技術を応用したリハビリテーション用の医療サービスです。すべての動作の基本となる姿勢バランスや、重心移動のコツをつかむためのリハビリテーションがおこなえます。
椅子に座ったままで実践できるため、転倒などのリスクも低く、立ったり歩いたりするのが難しい人でも利用できます。
患者に合わせたプログラムを設定できるほか、リハビリテーション時の動きをデータ化して治療成果をレポートにまとめることも可能。
医師やセラピストと患者の間で情報を共有して、スムーズにリハビリテーションに取り組めます。
RehaVR / silvereye株式会社
(出典:VRヘルスケアソリューション RehaVRが東急不動産ホールディングスグループが展開するシニア向け住宅「グランクレール」シリーズに採用|silvereye株式会社)
「RehaVR」は、VRを活用したリハビリテーションシステムです。VRゴーグルを着用し、VRで360度の映像を見ながら足こぎペダルで散歩して日々のリハビリテーションを実施します。
全国各地で人気のある名所・観光スポットをVRで巡れるため、楽しみながらリハビリテーションを実施できる点が特徴です。主に、高齢者の下肢筋力・全身持久力の改善を目的としたツールです。
NaReRu / 株式会社魔法アプリ
(出典:「苦手克服VRトレーニングシステムNaReRu」(以下、「NaReRu」)が完成。|株式会社魔法アプリ)
「NaReRu」は、原因となる刺激に段階的に触れて不安を消していく「曝露療法」に基づき、VRで恐怖症の解消をめざすサービスです。地下鉄やバス内の人混みなど患者が恐怖を感じる場面をVRで再現し、あたかもその場にいるような体験を繰り返して苦手を克服します。
電車シーンでは混雑度・高所シーンでは階数指定など細かな場面調整ができ、段階的なトレーニングが可能です。「NaReRu」は首都圏を中心に複数のメンタルクリニックで導入され、患者の治療に使用されています。
VRうつ病治療システム(仮) / 株式会社BiPSEE
(出典:BiPSEEのVRうつ病治療システム(仮)が「プログラム医療機器に係る優先的な審査等の対象品目」に指定、合わせて第二種医療機器製造販売業を取得│株式会社BiPSEE)
「VRうつ病治療システム(仮)」は、VRを活用したデジタルヘルスコンテンツを開発するメディテック企業・BiPSEEが開発中の、うつ病対策VRソリューションです。
ネガティブな感情を把握して、適切な距離を保ちながら症状の改善を図る「第三世代認知行動療法」をもとに、VRシミュレーションでうつ病治療を行います。
製品化にはいたっていませんが、厚労省の認可が下りるなど実用化に向けて開発が進行中です。なお、BiPSEEは2022年にMeiji Seikaファルマと「うつ病治療VR製品」の事業化推進に関する業務提携契約を結んでいます。
VR治療の活用で治療成績・利便性の向上が期待される
医療技術としては歴史の浅いVR治療ですが、技術の改良と実用化が進み、治療成績や利便性の向上に貢献しています。
VR治療の発展に期待しましょう。