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XRで製造業はどう変わる?XR技術を活用するメリットや活用事例を詳しく解説!

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XR(VR/AR/MRの総称)技術は、ゲームやエンターテイメント分野だけではなく、ビジネスの現場にも変革をもたらしています。

本記事では製造業におけるXR技術の活用メリットや、実際の活用事例について解説します。

製造業の分野ではXR技術との相性が良く、活用が進んでいる

XRの技術は「VR元年」と呼ばれる2016年ごろから、VR技術を皮切りに世間一般に知られ始めました。

現在、さまざまな業界やビジネスでXR技術が活用されていますが、中でも製造業はXRとの相性の良さが注目されています

例えば、人手不足や技術継承が課題となっている製造業では、従来は職人による対面での指導が不可欠でしたが、XR技術の活用により、技術継承を標準化・効率化できる点が大きなメリットとして注目されています。

XR技術を製造業に用いる3つのメリット

製造業にXR技術を導入する代表的なメリットは次の3つです。

  • プロトタイプ(試作品)制作にまつわるコストを削減できる
  • これまで業界で使われていたデータを低コストで流用できる
  • 現場作業のトレーニングや技術継承に有効活用できる

プロトタイプ(試作品)制作にまつわるコストを削減できる

物理的な実体のあるプロトタイプ制作では、設計に変更があるたびにプロトタイプも作り直す必要があり、都度材料費もかかります。

XR技術の活用は、次の項目の費用削減につながります。

  • プロトタイプの制作にかかる材料費
  • レビューのために関係者が集まる移動コスト
  • プロトタイプ展示のための製品の輸送費や会場費

レビュアーからのフィードバックもVR/AR/MR空間であれば、迅速に実施できるため、開発期間短縮や人件費抑制にもつながります

また、サイバネット「バーチャルデザインレビュー」のように、プロダクトを3D化するとイメージの共有がしやすく、レビュアーのフィードバックも受け取りやすいというメリットもあります。

これまで業界で使われていたデータを低コストで流用できる

製造業界や建築業界では、プロダクトの設計図や見取り図に3DCADやBIM(Building Information Modeling)、CIM(Construction Information Modeling)などのデータが使われています。

これらは比較的簡単にAR・VRコンテンツなどに変換できるため、業界でこれまで使っていたデータを流用できるのもメリットです。

また、紙のマニュアルもあわせてデータ化することで資源の節約になったり、現場作業ではXRデバイスの利用によりハンズフリー環境を作れるなど、業界全体のDX推進にもつながります。

現場作業のトレーニングや技術継承に有効活用できる

製造業におけるXRを活用したトレーニングや研修では、実際に手や体を動かす現場作業のトレーニングに活用されています。

XRを導入することによるメリットは次のとおりです。

  • 実際に手や体を動かして技術や作業手順の練習ができる
  • デジタル空間で作業をおこなうため、練習に使う素材・材料などを節約できる
  • 遠隔地からの指示や指導もおこなえる

また「職人芸」と言われるような高度な技術もARやVRで記録しコンテンツ化することで、後任育成における技術継承にも活用できます。

XRデバイスを利用するとハンズフリーでトレーニングや実際の作業現場で作業ができるため、作業効率の向上につながる点もメリットと言えます。

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製造業におけるXR技術を用いたソリューションの活用事例

実際に製造業に導入されている、XR技術を活用したソリューションの事例を4つ紹介します。

  • トヨタ自動車「HoloLens 2を用いたMR技術活用」
  • サイバネット「バーチャルデザインレビュー」
  • ホロラボ「mixpace」
  • NTTコノキュー「NTT XR Real Support」

トヨタ自動車「HoloLens 2を用いたMR技術活用」|ショールーム「GR Garage」で自動車の修理・整備にMRを活用

トヨタ自動車株式会社は2020年、同社が運営するショールーム「GR Garage」に「HoloLens 2」を導入しました。

「HoloLens 2」とマイクロソフトのソリューション「Dynamics 365 Guides」を組み合わせ、実際の自動車の上にAR映像を重ね合わせることで、修理・整備作業時のガイドとして活用しています。これにより、作業時間の70~80%を削減できる見込みです。

また、実際の修理・整備作業だけではなく、作業員のトレーニングにも活用されています。

サイバネット「バーチャルデザインレビュー」|プロダクトの設計からレビューまでをVRで実現

サイバネットシステム株式会社が提供する「バーチャルデザインレビュー」は、3D CADデータを3Dデータとして、VR空間上に表示するソリューションです。

レビュー・フィードバック・修正など、プロダクトのプロトタイプ制作に関わる作業をVR空間上でおこなえます。

VRでのレビューは平面図やPCモニタでの確認と比べ、直感的でわかりやすい点が特徴です。

また、VRゴーグル(ヘッドセット)を利用したリモートでのレビューが可能で、人の移動コストもかかりません。

このソリューションの導入により、プロトタイプ設計段階での時間コストや、金銭コストの削減も見込んでいます。

ホロラボ「mixpace」|AR/MR技術を活用した設計・施工・維持管理業務の効率化

株式会社ホロラボの「mixpace(ミクスペース)」は、製造業や建築業向けのXRソリューションです。3D CADやBIMで作成した設計データをARに自動変換し、現実空間に重ね合わせて表示可能です。

利用用途としてはデザインレビューや建築における施工検証のほか、AR表現を用いた立体感・存在感のあるプレゼンテーションやデモに活用でき、作業現場だけでなくクライアントなどに対しても有効活用できます。

mixpaceの活用事例では、2021年に大和ハウス工業による建物の設計・施工・維持管理業務の効率化、高品質化への取り組みをおこなっています。

NTTコノキュー「NTT XR Real Support」|MR技術を活用し遠隔地でも直感的な指示を実現

NTTコノキューが提供する「NTT XR Real Support」は、MR技術を用いた遠隔支援ソリューションです。

NTTコノキューデバイスから2024年10月に発売されたMiRZA(ミルザ)や、HoloLens 2などのXRデバイスだけではなく、Vuzix M400/M4000といったスマートグラス、iPhoneやiPadなどのスマホ・タブレットでも利用可能です。柔軟な組み合わせで遠隔から現場作業者に指示出しやデータ共有ができます。

また、作業中の映像と操作履歴を記録できるので、記録を元に作業手順を共有したり業務効率を改善したりなど、DX推進の手助けにもなってくれます。

製造業で使えるXRデバイスおすすめ3選

製造業の分野で使われているXRデバイスは複数ありますが、中でもおすすめの製品を3つ紹介します。

  • Magic Leap 2
  • Varjo XR-4
  • MiRZA

Magic Leap 2|ビジネス用途にフォーカスしたARグラス

Magic Leap 2:ビジネス用途にフォーカスしたARグラス

(出典:AR業界をリードする米国Magic Leap「Magic Leap 2」の販売を8月10日より日本で開始|MAGIC LEAP INC

Magic Leap 2」は一般的なメガネに近い形状のARグラスです。本体重量は260gと軽く、価格は税込660,000円です(2024年10月時点)。発売当初は一般消費者向けも視野に入れていましたが、現在はビジネス向けにフォーカスしています。

「HoloLens 2」の領域を追う形で、製造や建築の分野での導入事例が複数存在します。日本国内でも清水建設が「Magic Leap 2」を採用しています。

Varjo XR-4|高精細な3Dビジュアルを再現可能な高性能デバイス

Varjo XR-4:高精細な3Dビジュアルを再現可能な高性能デバイス

(出典:Varjo、自然な視覚と区別のつかないMR体験を提供する『XR-4シリーズ』を発表|株式会社 エルザ ジャパン

Varjo XR-4」はフィンランドのXR企業・Varjo(ヴァルヨ)が手がけるXRゴーグル(ヘッドセット)です。

価格は710,600円(2024年10月時点)と高価ですが、高いディスプレイ解像度(片目あたり3840×3744ピクセル)や、広い視野角(水平120度・垂直105度)を誇り、価格に見合った性能を持つデバイスです。

製造業での導入事例に加え、ヨーロッパでは軍事などの高精細・高セキュリティが必要な分野でも採用されています。

MiRZA|2024年10月発売、今後に期待のかかるXRグラス

MiRZA:2024年10月発売、今後に期待のかかるXRグラス

(出典:軽量でワイヤレス、高性能なXRグラス「MiRZA」を発表 ~世界初、スマートフォンと無線接続するAR2搭載グラス、法人パートナー募集も開始~|NTTコノキューデバイス

MiRZA(ミルザ)」は2024年10月16日に販売を開始した、株式会社NTTコノキューデバイス製のXRグラスで、価格は税込248,000円です(2024年10月時点)。

厚みを抑えた光学レンズを採用し、バッテリー内蔵ながら本体重量も約125gと軽量。その他、スマートフォンとワイヤレス接続で利用できるなどの特徴もあります。

産業向けソリューションでは、すでにNTTコノキューの「NTT XR Real Support」があり、製造業でも活用可能です。

また、今後さらなるツールやソリューションサービスの登場にも期待がかかります。

製造業にXR技術を導入する際の注意点

製造業へのXR技術導入に際して、導入する企業側の担当者が留意すべきポイントは次の2点です。

  • 適切なソリューションの選択
  • 運用コストの定期的な見直し

適切なソリューションの選択

XR技術の導入を検討する際には「自社のどの課題を解決するために、VR/AR/MRのどの技術をどのように活用するのか」を明確にしましょう。

XR技術は、仮想空間を作り出すVRや現実世界にデジタル情報を重ねて表示するAR、VRとARを融合させたMRなど、さまざまな技術を含みつつ、それぞれの技術に対応したさまざまなデバイスやサービスが存在します。

たとえば、製造現場の作業効率向上を目指す場合、一例として以下のソリューションが考えられます。

  • ARを活用した作業支援システム:作業手順をARで表示することで、作業員のミスを減らし効率性を高める
  • VRを使ったシミュレーション:危険を伴う作業の訓練をVR空間で行うことで、安全かつ効果的にトレーニングをおこなう

事前にさまざまな情報収集をおこない、自社のニーズに合ったソリューションを見つけ出すことが重要です。

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運用コストの定期的な見直し

XR技術の導入時には、初期費用だけでなく導入後の運用コストについても考慮する必要があります。

XR技術は進化が早いため、ハードウェアの入れ換えやソフトウェアのアップデート、システムの保守・運用など継続的な費用が発生する可能性があります。

運用コストには具体的に以下のようなものが含まれます。

  • 社内運用にかかる人件費
  • システム保守にかかる費用
  • 技術ライセンス費用

XRのシステムは導入して終わりではなく、安定稼働のために定期的なメンテナンスが必要となります。

社内に専門的な知識や技術がない場合は、外部委託による費用も考慮しておくと良いでしょう。

XR技術は製造業と相性抜群。事前計画をしっかり立てたうえで導入したい

XR技術と製造業の相性は良く、すでに多くの企業が導入によるメリットを実感しています。今後、XR技術はさらに進化し、製造現場での活用シーンはより一層広がっていくでしょう。

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この記事を書いた人
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