YouTubeなどの動画プラットフォームには、3Dや2Dのアバターを用いた動画コンテンツが多く登場しています。
人間のように動いて話すアニメーションキャラクターはVTuberと呼ばれ、新しい形のエンターテイメントコンテンツとして注目されています。
VTuberはアバターで活動するクリエイター
VTuberは2Dや3Dアバターを用いて動画投稿、またはライブ配信をしている動画配信者のことです。VTuberの存在は、2016年にキズナアイが登場したことで、広く認知されるようになりました。
YouTuberとの違いは「バーチャル」と「リアル」
項目 | VTuber | YouTuber |
キャラクター | 2Dまたは3Dのアバター | 実際の人間 |
外見のカスタマイズ | 自由自在にいつでも変更可能 | 準備が必要 |
オリジナリティ | 模倣されやすい | 模倣がむずかしい |
VTuberはバーチャルの2Dもしくは3Dキャラクターを用いてコンテンツを作成します。また、VTuberは匿名性も高く、外見のカスタマイズも容易です。
一方、YouTuberは実在するクリエイターが実際に画面に映ることで、模倣されにくいオリジナリティの高いコンテンツが制作できます。
VTuberの先駆け
VTuberの先駆けとして、Ami Yamato(アミ ヤマト)、キズナアイ、VTuber四天王(キズナアイを含む)が挙げられます。
特に、2016年に登場したキズナアイのブレイクで「VTuber」という言葉が広く知られるようになりました。
Ami Yamato(アミ ヤマト)
Ami Yamato(アミ ヤマト)はVTuberの第一人者で、2011年からVTuberとして活動を開始しています。メインコンテンツはVlog、時事評論、イギリス文化の紹介などです。
なお、2024年時点でも動画配信を続けており、数カ月に1回のペースで新しいコンテンツがアップロードされています。また、しっかりと作り上げられたコンテンツを支持するユーザーは多く、フォロワー数も14万人以上を誇ります。
キズナアイ
キズナアイは2016年から活動しており、「VTuber」という言葉を広く知らしめた立役者で、世界的にも高い評価を得ています。3Dアバターはピンクヘアと大きなリボンが特徴的なかわいらしい女性です。
キズナアイのコンテンツはゲーム実況やバラエティなど、エンタメ要素が強いところが特徴です。ライブ配信でファンとも積極的にコミュニケーションを図っており、YouTubeフォロワー数は300万人を突破しています。
現在スリープ(無期限活動休止)中です。
VTuber四天王
「VTuber四天王」は、初期(2016年以降)のVTuberブームを牽引した4人のVTuberを指す称号です。輝夜月(かぐやるな)、ミライアカリ、電脳少女シロの他、前項で紹介したキズナアイも含まれています。
VTuber名 | デビュー年 | 特徴 | 主なコンテンツ | Ch登録者数(※) |
2016年 | 明るく元気なキャラクター AIを自称 | ゲーム実況 バラエティ動画 ライブ配信 | 301万人 | |
2017年 | ハイテンション | エネルギッシュなパフォーマンス ユーモアあふれるコンテンツ | 85万人 | |
2017年 | 未来から来た少女(設定) 親しみやすさが定評 | ゲーム実況 歌ってみた動画 雑談配信 | 67.2万人 | |
2017年 | 清楚で可愛らしい見た目 毒舌とブラックジョーク | ゲーム実況 特にホラーゲーム実況 | 64.9万人 |
※2024年7月時点
VTuber活動形態は個人と法人の2種類
ここでは、個人で活動するVTuberと法人所属VTuberの活動内容を解説します。
個人で活動するVTuberの活動内容
個人で活動するVTuberは、自身の裁量でコンテンツ制作が可能なため、YouTubeアカウントやアバター運用で独自のブランディングを進められます。
また、柔軟性をもったコンテンツ制作ができ、トレンドをタイムリーに取り入れることも可能です。
その一方で、新しい機材やソフトの設定などVTuberの業務負担が大きく、クリエイティブ活動以外への時間確保が必要です。
個人で活動する代表的なVTuberとして、漫画家・佃煮のりお氏がプロデュースした「犬山たまき」、ゲーム実況などで人気を博す「名取さな」が挙げられます。
法人所属のVTuberの活動内容
法人所属のVTuberは企業の支援下で活動し、大規模なイベント参加や企業ブランディングをサポートします。
専門機材・ソフトの導入や、スタッフの協力を得ることができるのは法人所属の大きなメリットです。
また、他社や他業種との協業も進めやすく、より大きなビジネスチャンスが期待できます。
一方で、所属法人の企業戦略やプロジェクト方針の意向に従う必要があるため活動の自由度は低くなる傾向にあり、VTuberの一存でのキャラクター使用はできません。
代表的な法人所属のVTuberとしては、ホロライブプロダクション所属の「兎田ぺこら」、ANYCOLOR株式会社のVTuber(バーチャルライバー)グループ「にじさんじ(NIJISANJI)」などが挙げられます。
VTuberの品質を左右する技術と機器
ここではVTuberの品質を左右する以下の技術と機器について解説します。
- モーションキャプチャー技術
- 専用ソフトウェア
- 高解像度のグラフィックス処理
モーションキャプチャー技術|人の動きをとらえる
モーションキャプチャー技術は人間の動きをとらえてアバターに反映させる技術です。
アバターの基となる人間に「マーカー(目印)」を取り付け、3次元で動作を記録していきます。
記録方式には光学式と機械式、磁気式の3つの種類があります。
記録方式 | 計測器具 | データ収集方法 |
光学式 | マーカー付きのボディスーツを着用 | 複数台のカメラを使い、マーカーの位置情報を収集する |
機械式 | ジャイロセンサー、 加速度センサーを装着 | 体の各部位にあるセンサーからデータを収集する |
磁気式 | 磁気コイルをマーカーとして装着 | 磁界のゆがみを利用し、動作をキャプチャーする |
なお、現在ではマーカーを使わず、AIが人体の骨格情報を検出したうえで人の動きをデータ収集する「姿勢推定」技術に注目が集まっています。
具体的にはVisionPoseやユーザーローカルの姿勢推定AIなどが挙げられます。
専用ソフトウェア|バーチャルキャラクターを動かす
アバターを2D、3Dで表示させて動かすには、専門ソフトウェアが必要になります。
2Dアバターを作成する場合、Live2D Cubismがおすすめです。アナログで描いた絵も自在に動かすことができます。また、パーツごとに指定した動きを設定することも可能です。
一方で、3Dアバターを作成する場合はAdobe Character Animator、VRoid Studioといったソフトウェアがあります。
高解像度のグラフィックス処理|ユーザー体験の向上
高解像度のグラフィックス処理によって、アバターはより鮮明で滑らかな動きができます。アバターの自然な動きにより、ユーザー体験は向上します。
高解像度のグラフィックス処理には高スペックのGPU(画像処理装置)、ディスプレイ、ソフトウェアが必要です。
GPUの性能を上げることで、データを処理・演算し、3D画像やアニメーションを即座に生成・表示するリアルタイムレンダリングの品質が向上します。
また、視聴者は高解像度ディスプレイ(4K、8K)を使用することもあるため、コンテンツの制作段階で4Kや8K対応も考慮しておきましょう。
VTuberを知ることでXRの世界が身近になる
VTuberコンテンツをただ楽しむだけでなく、どんな仕組みでVTuberが活動しているのかが分かると違った見方ができて、もっと面白くなりそうです。
VTuberの活動に使われている技術は、XR(VR・AR・MR)でも使われていたり、想像以上に身近な存在になってきています。