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ARでスポーツ観戦は変わる?ファン体験を向上させる拡張現実

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「今ゴール決めた選手は誰?」「ボールはどこへ行った?」「今日のお客さん何人ぐらい入っているんだろう?」

現地でスポーツの観戦をしているとこんな声が聞こえてくることもしばしば。

そんなスポーツの観戦においてもARの技術が導入され始めていることをご存じでしょうか?

実際のスタジアム観戦では従来のテレビ視聴のようなデータは表示されませんが、ARを用いたスポーツ観戦では、今目の前で見ている試合にタイムリーにさまざまな情報を投影してくれることで、あらゆるデータを補完してくれます。

スポーツのAR観戦とは?

AR観戦は、「Augmented Reality(オーグメンテッド・リアリティ):拡張現実技術」を用いたスポーツイベントの新しい観戦方法です。スマートフォンやARデバイスを通して、目の前のスポーツシーンにデジタル情報が投影されます。

野球ではホームランのボールの軌道が見られたり、サッカーでは得点を決めた選手情報が見られたりするなど、リアルタイムにARが情報を表示。ゲームの盛り上がりに合わせて、選手情報やチームの統計データが目の前にオーバーレイ(重ね合わせる)されることで、スポーツ観戦をよりわかりやすく、楽しみやすいものにしてくれます。

スポーツ観戦にARが導入された背景


スポーツ観戦にARが導入された背景には「AR技術の進歩」と「手軽に利用しやすくなった」ことが挙げられます。

3Dモデリング技術の向上と5G回線の普及により、リアルタイムでさまざまな情報が重ね合わせられたスポーツ観戦が可能になりました。

また、ARデバイス(ARグラスなど)が購入しやすい値段になってきたことと、スマートフォンでも気軽にARアプリやWebAR※が利用できるようになったことも、AR観戦の導入が進んだ大きな要因といえます。

※WebARとはWebブラウザ上でARを体験できる技術のこと

AR観戦のメリット

AR観戦のメリットとして、タイムリーな情報提供、多様なデジタル演出、そして観戦ポイントの増加が挙げられます。

例えば球場で野球観戦をしているときに、専用のアプリケーションをかざすと試合情報や投球実績などの選手情報が表示されたりします。

実際に、2022年12月15日に、楽天モバイルと株式会社楽天野球団(東北楽天ゴールデンイーグルス)によって、試合情報や選手情報のAR表示やARを活用したインタラクティブな新しい応援方法、混雑状況のリアルタイム配信などが検証され、導入に期待が高まっています。

また、ARで表示されるコンテンツに広告枠を設けることで、新たなスポンサーシップの機会が期待できます。AR観戦はユーザー側だけでなく、企業側にも大きなメリットがあるといえます。

AR観戦のデメリット

一方、デメリットとしては、デバイスやプラットフォーム(サービス)の制限、インターネット接続への依存、そしてユーザーにとって不要な情報(例えば広告など)の投影などが考えられます。

WebARなどでデバイスの制限を解決する取り組みは進められていますが、依然としてインターネット障害はAR機能にとって大きなリスクといえそうです。

しかし、広告の表示に関しては、スポンサーが増えることによって観戦チケットが安くなれば、企業だけでなくユーザーにとってもメリットになるかもしれません。いや、そうなることを願います!

VR観戦とは違う?

AR観戦とVR観戦は異なるものです。

AR観戦は現実世界にデジタル情報を重ね合わせて、観戦体験を向上させます。

VR観戦は完全にデジタル化された仮想空間を作り出し、ユーザーをその空間に没入させます。VR観戦では試合会場に行く必要はありません。リモートで、まるでスタジアムにいるかのような体験ができるのです。

AR観戦に必要なものは?

  • ARデバイスやスマートフォン
  • インターネット接続
  • 専用アプリケーション

ARデバイスやスマートフォン

現実世界にデジタル情報をオーバーレイするために、ARメガネやヘッドセットなどのARデバイスが必要です。また多くのARデバイス自体がスマートフォンやPCに接続して使用するため、ARデバイスを接続するためのスマートフォン(PC)も必要になることがほとんどです。もしARデバイスがなくても、ARアプリやWebARといったスマートフォンだけで完結できる技術も開発されています。

インターネット接続

リアルタイムのデータと映像をスムーズに受信するためには、高速かつ安定したインターネット接続が必要です。特に、遅延が少なく、大人数でも同時に接続できる5G通信環境が望ましいとされています。

専用アプリケーション

スポーツイベントやチームのデータを表示するためには、専用のアプリケーションやソフトウェアが必要になります。スマートフォンにダウンロードし、ARデバイスを操作します。

AR観戦の事例

  • MLBのAR観戦(野球)
  • JリーグのAR観戦(サッカー)
  • NBAのAR観戦(バスケットボール)

AR観戦は野球やサッカー、バスケットボールといったさまざまなスポーツで導入が進んでいます。プロジェクトの多くは特別なARデバイスを必要としないARアプリやWebARを採用しているため、手軽に始められるようになっています。

MLBのAR観戦(野球)

MLBのミネソタ・ツインズは、ARound社と提携してボールパークでAR観戦を実現させました。球場に来たファンは専用アプリをダウンロードして、チームの入場やホームランなどのタイミングでインタラクティブなライブコンテンツを楽しむことができます。

ホームランが出た際に上がる花火や、巨大な選手のキャラクターが目の前に出現するといったAR演出が話題となりました。MLB全体としてもAR観戦の導入が進められているようです。

ホームランダービーなどでは、実際の打球のトラッキングなどをARによって投影させ、ファンは、打球がどのような軌道で、どれくらい飛んだのかなどをARで確認できます。

JリーグのAR観戦(サッカー)

日本でもAR観戦への取り組みは進められています。アルビレックス新潟は2021年、KDDIと協力してAR観戦の実証実験を行いました。ユーザーがスマホをピッチにかざすと、ARで試合状況や選手情報が表示され、ファン体験を向上させます。

また、マルチアングル映像サービスも提供され、メインスタンドから様々な角度の映像をリアルタイムで見ることができます。選手が実際に使用するロッカールームでのAR体験ツアーなども開催されています。

NBAのAR観戦(バスケットボール)

NBAでは「ファンがスタープレイヤーになりきるAR観戦」の試みが進んでいます。

ファンはまず自身の3Dスキャンをします。そのデータを試合中の有名プレイヤーにAR技術で投影します。すると、ゲームでプレイしている人物がファン自身となって再現されます。これがライブストリーミングで行われるということで、多くの人を驚かせました。

将来的にはアバターオプションのほか、多言語での放送、インフルエンサーや著名人による解説、試合を仮想空間に移動する機能、新しいアニメーショングラフィック機能などがAR観戦に導入される計画です。

この記事を読んで、現地で観戦したいなと思われた方も多いのではないでしょうか?今後導入が進むことを期待しましょう!


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この記事を書いた人
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