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NTTコノキューデバイスの「MiRZA」とは?軽くてワイヤレスで高性能だからできるXRの新体験

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2024年9月9日、NTTコノキューデバイスがXRグラス「MiRZA」(ミルザ)を発表しました。

報道で発表をお聞きになった方も多いと思いますが、「どんなことができるのか、もうちょっと詳しく知りたい・・・」という方もいることでしょう。

というわけで今回、NTTコノキューデバイス本社におじゃまして、製品を使ったデモを体験してきました。合わせて同社・堀 清敬(ほり きよたか)社長に、本製品にかける意気込みも伺いました。

MiRZAの魅力を存分にお届けします!

MiRZAで「高性能」を「気軽」に身に付ける

MiRZAはパッと見たところ黒縁のメガネです。しかし内部には最新のチップ、センサー、バッテリーなどが凝縮され、今までにない新たなXR体験を提供してくれます。

主な特徴は3つ。

1つ目は軽量なこと。本体の重さは約125gで、通常のメガネに近い重量バランスや厚みを抑えた光学レンズを採用しています。

実際に今回のデモで延べ1時間程度掛けましたが、デモ終了後、耳・鼻・首などに痛みを感じないのはもちろん、違和感もまったくありませんでした。

2つ目の特徴はスマートフォン(以下、スマホ)とワイヤレスで接続できること。これはMiRZAの掛け心地の良さに、大きく貢献しているといえるでしょう。

ちなみにグラス本体にはQualcommのチップ「Snapdragon AR2 Gen1」が搭載されています(XRデバイスとしては世界初)。

高性能なチップを搭載し、スマホと連携させることで、ソフト処理を分散させ、3D動画を扱うような負荷が高いアプリでも、安定的に稼働させることができます。

スマホは現状、シャープの「AQUOS R9」が対応していますが今後、対応機種は順次、拡大されていく予定です。

重量

約125g

サイズ

(使用時)約187mm(W)×約45mm(H)×約184mm(D)

(収納時)約187mm(W)×約45mm(H)×約96mm(D)

チップセット

Snapdragon® AR2 Gen1

ディスプレイ/光学装置

解像度:FHD (1920×1080)

視野角:45°(対角)

輝度:約1,000nits

光学装置:MicroOLED 両眼フルカラー

※LetinAR社独自の薄型ミラーバー方式の光学モジュールを採用

連続使用時間

1~1.5時間

※カメラ使用時や明るさを最大にした際などの負荷の高い使い方の場合

充電方法/時間

本体同梱のUSB Type-Cケーブルにて、2時間以下で充電可能

(引用元:MiRZA|NTTコノキューデバイス

軽快な掛け心地、メガネ型のデザインとハイエンドな機能を両立させたMiRZA。

3つ目の特徴は空間認識による6DoF表現。約1,000nitsの明るさとFHD(1,920×1,080)の高画質で画像を表示し、現実世界に3Dのオブジェクトを配置することができます。

▽関連記事:3DoFと6DoFの違いとは?【知っておきたいXRの専門用語】
https://www.xr-lifedig.com/beginner/240325_01

ところでMiRZAのレンズに線のようなものが見えます。「なんだろう?」と思われる方もいるかもしれませんね。実はこれ、鏡なんです。

MiRZAは韓国の新興企業、LetinAR社が独自に開発した光学モジュールを採用しており、レンズの上方から照射された映像を鏡で反射し、現実空間と重ね合わせて見る仕組みをとっています。

現在、グラスタイプのXRデバイスにはハーフミラーを使う方式の製品がよくありますが、それに比べてレンズ部分が薄くできています。これもまたMiRZAの掛け心地に寄与しているといえるでしょう。

レンズにあるスリット状の線は鏡。レンズの上側から照射された映像を、鏡で目に向けて反射することで、現実空間と仮想空間を重ね合わせます。

グラスの前面中央にRGBカメラ付いており、カメラ機能も搭載されています。左右の2カ所(つるの付け根の辺り)にモノクロカメラが搭載され、こちらは空間認識やハンドトラッキングのためのカメラになっています。

このような高度な機能をふんだんに搭載したMiRZA。希望小売価格は24万8,000円(税込)となっています。

MiRZAを上下逆さまにしたところ。右側のつるにある細長い突起部分は、メインスイッチとスピーカーの音量調節スイッチです。この他、右側のつるにタッチセンサーが付いています。

人々の暮らしに貢献するデバイスでありたい

MiRZAについて、NTTコノキューデバイスの堀社長は「企画・開発から製造まで一貫して日本国内で行った、NTTコノキューデバイスのオリジナル商品」と自信をのぞかせます。

開発した背景については次のように語ります。

「コノキューグループ(NTTコノキュー、NTTコノキューデバイス)の事業目的は、メタバースやXRなどのテクノロジーを、人々の暮らしや企業経営に生かせる価値あるサービスとして提供していくことです。そのためには、気軽に装着できて高性能なXRデバイスが必要。『世の中に無いなら自分たちで作ろう』と、このプロジェクトを始めました」

さらに堀社長は次のように強調します。

「目指すのは、高度なテクノロジーをお客様に届けることだけではなく、その製品やサービスを通じて人々の暮らしが豊かになることです」

それを実現するために、コノキューグループではパートナー企業を募っています。9月9日の発表時点で12社のソリューションパートナーと、2社の事業創出パートナーが決まっており、今後の広がりが楽しみです。

今回、お話を伺ったNTTコノキューデバイスの堀 清敬 社長。

さて、それではいよいよ実機のデモの模様をお届けしましょう。

MiRZAを掛けたら未来が見えた!

今回のデモは6種類。いずれもMiRZAがもつ特徴が体感できるものばかり。ひと言でいうと、「近未来かと思っていた景色が身近で現実のものになった」――。そんな感覚に浸ることができました。

リアルタイム字幕・翻訳(XRAI Glass)

MiRZAはリアルタイム字幕・翻訳機能としてXRAI.Incが提供するアプリ「XRAI Glass」に対応しています。140以上の音声言語をリアルタイムで翻訳し、MiRZAに字幕として表示することが可能です。

今回のデモでは、英語のネイティブスピーカーで試してみました。当然ながら相手の英語は、かなり早口です。しかしMiRZAを掛けると、視界の中に即座に日本語字幕が表示され、相手の話を理解することができました。

国内のインバウンド観光客が多い昨今、たくさんの需要がありそうです。

デモは、目の前に英語のネイティブスピーカーがいる想定で、話者の映像を使って行われました。

MiRZAの視界をモニターに映したもの。空間に字幕が表示されています。

オフィスワーク(MiRZAアプリ)

MiRZAで複数のブラウザ画面を同時に立ち上げることができます。メールの他、ブラウザでビジネス用クラウドソフトを使うことももちろん可能。

スマホとBluetooth接続できるキーボードがあれば、自宅やカフェなどどこでも仕事ができます。ノートパソコンを持ち歩く必要がなくなるかもしれません・・・。

ブラウザやアプリを立ち上げる前のホーム画面には天気予報、スケジュール、お気に入りのアプリなどが表示されています。

MiRZAの視界をモニターに映したもの。ブラウザの画面を3つ開いたところです。ブラウザ画面の奥に人物が映っているのが見えるでしょうか。現実空間の視界の中に、6DoFでウィンドウが3つ浮いている状態です。

こちらはホーム画面。天気予報。スケジュール、お気に入りのアプリなどが表示されます。操作は基本的に「レイ操作」で行います。無線接続したスマホの先から仮想のレーザーが照射され、PCのマウスのような感覚で画面操作ができます。

遠隔作業支援(NTT XR Real Support)

NTTコノキューが提供するサービス「NTT XR Real Support」をMiRZAで体験しました。

これは、技術に長けた人が作業者に遠隔から支援を行うためのシステムで、プラントの運転管理や建築現場などで活用されています。

人手不足や技術伝承の必要性が叫ばれる中、ニーズが高まっています。もちろん、作業者の安全確保のためにも有効です。

今回は遠隔にいる人から音声とXRで指示を受けながら、配電盤を操作してみました。

MiRZAを掛けると、6DoFで空間にマニュアルが表示され、それを見ながら作業ができます。

紙のマニュアルやタブレットでは、どうしても手をふさぐことになりますが、この方法だと両手を空けることができるため、作業効率アップが期待できます。

表示したマニュアルはハンドトラッキングで好みの位置に移動可能です。

▽関連記事:「トラッキング」方式の種類とは?どんな違いがあるの?【知っておきたいXRの専門用語】
https://www.xr-lifedig.com/beginner/240521_01

さらに指示者は、作業者の視界の中に印を付け、「“このボタン”を押して」と具体的な指示を出すこともできます。

配電盤操作についてまったく分からなくとも、指示を受けて操作することができました。

MiRZAは軽くて配線がないので、ヘルメットを付けた状態での着脱も容易。現場作業に適しています。

このデモでは配電盤(壁に貼った配電盤の写真)を操作します。MiRZAのスピーカーから、遠隔にいる人からの指示が聞こえます。

MiRZAの視界をモニターに映したもの。配電盤の横(画面中央)にマニュアルを表示しています。

ミュージアムガイド(ARミュージアム)

文字通り美術館・博物館で活用できそうなデモです。MiRZAを掛けて展示物の土偶を見るともう1つ、仮想の土偶が見えます。

仮想の土偶をつかんで持ち上げ、逆さまにして見たり、裏側から眺めたりすることができます。ハンドトラッキングの機能を生かしたインタラクティブな展示です。実物ではとてもこんなことはできません。

まさに“新たに拡張された”鑑賞体験です。

テーブルに置かれた展示物の土偶。MiRZAを掛けるともう1つ、仮想の土偶が見えます。

MiRZAの視界をモニターに映したもの。仮想の土偶をハンドトラッキング機能でつかみ、持ち上げ、色々な角度から鑑賞することができます。

ライブ(Tacitly)

NTTコノキューが運営するバーチャルアーティストユニット「Tacitly」のライブをMiRZAで鑑賞しました。こちらもインタラクティブに見られるところがポイントです。

ステージの前にある球体をつかんで手を動かすと、ステージを上下、左右、奥、手前と自在に動かすことができます(手を離すとステージはその空間に留まります)。

空間に浮かぶステージの周りを歩き回ったり、さまざまな角度からステージを見たりすることが可能。これまた本当に、6DoFを満喫できます。

しかも、Tacitlyが踊る映像はとてもなめらか。スマホと連携するMiRZAの、処理能力の高さが発揮されているのでしょう。

ステージの手前にある球体は、MiRZAでは卓球の球くらいの大きさに見えます。これをつかむと、ステージを空間上で自在に移動させることができます。

Tacitlyのライブ映像はMiRZAで見ても動きがなめらか。

ゲーム(GHOST HUNTER)

空間に隠れているゴーストを探して捕まえるゲームのデモ。

プレイヤーはMiRZAをかけ、手にスマホを持ちます。スマホ画面に表示されたレーダーでゴーストの居場所の当たりをつけ、MiRZAを通して捜索。発見したら手をかざして光を投射し、ゴーストを捕まえます。

グラスとスマホを連動させながらインタラクティブにXRを操作するこの機能は「Dual Render Fusion」と呼ばれ、Qualcommのプラットフォームを採用したXRデバイスの特長の1つとなっています。これによりMiRZAの操作性がアップしています。

MiRZAの視界をモニターに映したもの。かわいらしいゴーストをつかまえます(こちらのモニターでは画面左下に、スマホで表示されるレーダーを合成表示しています)。

ゲームを始める前にMiRZAで空間(壁、床、天井、および室内にある家具など)をスキャンします。そのスキャンデータを元にアプリが空間にゴーストを配置します。

ゴーストを探しているところ。MiRZAを掛けているプレーヤーには、かざした手のひらから光が投射されているのが見えています。

いかがでしょう? 「触ってみたい!」と思ってくださった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

MiRZAは東京・秋葉原の「XR BASE」や埼玉の「アイメガネ南浦和店」などで体験可能です!

また、全国のドコモショップなどでも体験することができるようになる予定ですので、NTTコノキューデバイスのホームページで続報をお待ちください。

さらに、ドコモの家電・デバイスレンタルサービス「kikito」でもレンタルができる予定です。こちらも楽しみですね!

販売は、法人向けにはNTTコミュニケーションズ、個人ユーザー向けにはドコモショップ、ドコモ公式オンラインショップ、kikito、Amazonなどで行われる予定です。

MiRZAでぜひ、XRの新体験を味わってください!

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この記事を書いた人
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