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ARグラスを掛けて夜の鳥取砂丘で宇宙飛行士体験!

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鳥取砂丘(鳥取県鳥取市)を舞台に、ARを使って、月面を探査する宇宙飛行士体験ができる——。そんなユニークなアクティビティが開かれています。

どうやらそのアクティビティが“宇宙好き”たちの間で注目を浴びているとか。果たしてどんなワクワク体験が待ち受けているのでしょうか?

体験会を企画・運営する株式会社amulapo(アミュラポ)取締役COOの松広 航(まつひろ こう)さんに話を聞きました。

鳥取砂丘が宇宙産業界から熱い視線を浴びている?

鳥取砂丘は山陰地方の日本海沿岸に位置する広大な海岸砂丘。砂漠のような雄大な景色をひと目見ようと、数多くの観光客が集まります。

その鳥取砂丘が、砂漠以外にも“ある場所”に似ているということで、最近注目を浴びているのをご存知ですか?

それは月面。地形の起伏や、地面がサラサラとした砂で覆われている点がよく似ているそうで、そこに目を付けた宇宙開発の研究者や事業社たちが、鳥取砂丘で、月面での使用を想定した装置・機器の実証実験を行っているのだそうです。

夜の鳥取砂丘に設けられた体験会会場。確かに!SF映画のような風景。

今回ご紹介する「~夜の鳥取砂丘で宇宙飛行士体験~ 月面極地探査実験A」も、宇宙を軸にさまざまな事業を展開する株式会社amulapoが、「鳥取砂丘と月面の類似性に心を動かされたことがきっかけで企画したもの」だと松広さんは言います。

 科学的根拠に基づく5つの月面体験をARで表現

「~夜の鳥取砂丘で宇宙飛行士体験~ 月面極地探査実験A」は文字通り、夜間に開かれます。時間は全体で約2時間。そのうち30分~40分間でARを使った宇宙飛行士体験を楽しみます。

2025年2月に開催された時の会場の様子。スクリーンの前に立っているのが、今回お話を伺った株式会社amulapo 取締役COOの松広 航さん。体験会はAR体験の他に、このような形でレクチャーも交えて行われます。

ARを使った体験はミッション1からミッション5までの5つ。人類が月面を踏んだ瞬間から、近い将来実現するかもしれない月面開発まで体験できます。

ARグラスを掛け、ARマーカーがプリントされた旗を足もとの砂地に突き刺すと、いよいよミッション1「アポロの軌跡(1969)」が開始。

中空に突如、「月着陸船イーグル号」が現れ、砂地に着陸。中から宇宙飛行士が降りてきて、次のように述べます。

「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ」

アポロ11号ニール・アームストロング船長の、あの有名な言葉です。

テレビなどで見たあの瞬間がARで目の前に再現されるわけです。最初のこの瞬間で参加者たちは、一気に月面にいるかのような気分に浸ります。

ミッション1でARグラスを通して見える景色のひとコマ。アポロ11号のニール・アームストロング船長が月面に着陸したところです。アームストロング船長と月着陸船イーグル号(画像右手)はAR。画像の下の方にうっすらと見えるのは鳥取砂丘の砂地です。

ミッションは「エネルギー資源探査」「水探査」「建築資源探査」と続き、月面都市建設に必要不可欠な資源を収集していきます。

最後のミッション5は「月面都市探索」。月面基地をベースに都市を造るという設定のもと、参加者は建設予定地を探索し、ついに発見します。月面に人類が定住できる都市ができた様子を眺めたところで、AR体験は終了となります。

ミッション4でARグラスを通して見える景色のひとコマ。レゴリス(月の砂)を集めてつくったブロックをロボットで積み上げ、月面に基地を造ります。画像では暗くて分かりにくいですが、地面は鳥取砂丘の砂地です。

ARを使えば鳥取砂丘に月面基地を造ることもできる

この体験会では、デバイスは「XREAL Light」(発売時は「Nreal Light」)を採用し、スマートフォンアプリはAndroidで稼働する独自のものを使用しています。表示は6DoFに対応。

AR体験はいずれも実際に研究されている科学的背景を持つ内容をもとに、エンタテインメント要素を加えて制作してあります。月や宇宙に詳しい本格派も楽しめる、それ以外の人でも知的好奇心が刺激される内容になっています。

没入感を高める演出も凝らしてあります。例えば、参加者が砂地に旗を立てると月着陸船イーグル号が現れるなど、各コンテンツがインタラクティブなものになっています。

夜の鳥取砂丘という月面そっくりの環境、そして、そこで宇宙飛行士のような動作をすることが相乗効果をなし、ARの没入感を高めているのです。

さらに松広さんによるともう一つ、鳥取砂丘でARを使う決定的な意味があると言います。「鳥取砂丘は大部分が国立公園なので、ちょっとした構造物でも設置することが困難。しかし、ARなら環境に負荷を与えることなくさまざまな表現が可能です」(松広さん)

株式会社amulapoは、鳥取砂丘を宇宙産業の実験フィールドとしてはもちろん、エンタテインメントや教育といった視点でも活用できるところにも着目し、今回のような体験会コンテンツを提案してきました。

地元の鳥取県と鳥取市の協力のもと、宇宙開発に観光産業の多角化という視点も合わせて、2021年に初めて実証実験としてこの体験会を開催。その後、事業化して現在は不定期で開催しています。

実証実験からこれまでの参加者は数百人に到達したそうです。とりわけ宇宙好きにはたまらないもののようで——。

体験会終了後、涙を流す人もいました。その様子を見て私たちもうれしかったです」と松広さんは語ります。

宇宙を軸とした事業展開、中でもAR体験は重要な位置づけ

2020年に設立された株式会社amulapoは、実はXRソリューション専門の会社ではありません。宇宙ロボットの専門家やJAXA(宇宙航空研究開発機構)研究者をはじめ、実際に宇宙開発経験を持つメンバーが多数在籍し、ロケットの研究開発支援なども行っています。

コーポレートスローガンは「わくわくは、宙(そら)にある。」

宇宙を軸に据えたさまざまな事業を展開する中、今回のようなAR体験会は同社にとって重要な位置づけにあるそうです。

人々に科学技術を正しく知ってもらい、かつその活用方法を提案することが私たちの目指すところです。科学技術に関する発信と、その社会実装に向け、より多くの人が宇宙に関わりを持つきっかけとなるようなコンテンツを制作しています」(松広さん)

とはいえ専門的過ぎないところもポイントです。エンタメや観光、教育といった視点と結びつけることで多くの人たちに宇宙産業について知ってもらい、宇宙産業の社会的意義を醸成し、宇宙開発を担う人材を育む——。そのような好循環をつくることが、この体験会の根底にあるようです。

定期開催に向けて準備中、月面極地探査実験“B”にも期待

「~夜の鳥取砂丘で宇宙飛行士体験~ 月面極地探査実験A」の“A”は、今後シリーズ化することを想定して付けたものだそうです。ということは今後、バージョンアップした月面極地探査実験“B”もありうる?

詳細は未定ですが、不定期で開催しているこの体験会を定期開催できるよう、準備を進めています。ARコンテンツにも磨きをかけ、“鳥取砂丘のナイトアクティビティ”として、インバウンド観光客の皆さんにも受け入れられる、新規性のあるものを展開していきたいです」(松広さん)

興味がある方はぜひ、株式会社amulapoのホームページXなどの各SNSをチェックしてみてください!

実は筆者自身、この体験会には並々ならぬ関心と参加意欲を持っているので、次回開催にはぜひ参加したいと心待ちにしているところです。

それでは皆さん、“月面砂丘”でお会いしましょう。

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この記事を書いた人
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