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メタバース婚活で「運命の人」と出会う

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メタバース上で婚活中の二人の新たな出会いの場を生み出す、「メタバース婚活イベント」が注目を集めています。

「メタバースで婚活?」と思われる人も多いかもしれませんが、その方が、相手の本質的な魅力を感じることができ、結果的に理想のパートナーが見つかる可能性が高いそうです。

パーソルイノベーション株式会社 メタバース婚活サービス「Mitsu-VA(ミツバ)」 運営管理責任者の高須 美谷子(たかす みやこ)さんにお話を伺いました。

メタバース婚活イベントとは?

このところ、地方自治体が主催する「メタバース婚活イベント」が話題になっています。メタバース婚活イベントは文字通り、メタバース空間を利用してデジタル上で婚活を行なうイベントです。

婚活中の男女が自身のアバターを操作して仮想空間のパーティー会場に集い、リアルで実施される婚活パーティーと同様にコミュニケーションを図ります。

「私はかつて10年ほど民間の結婚相談所で仲人、婚活アドバイザーをしていました。その中で、個人の容姿や職種・収入面などの条件に縛られずに、多くの人が結婚できる仕組みをつくりたいと考え、考案したのがメタバース婚活で、2022年6月に一般社団法人メタバース婚活協会としてサービスを開始しました」(高須さん)

同協会が全国の自治体と協力して開催してきたメタバース婚活パーティーは約2年で20回になります。2024年8月からは、総合人材サービスのパーソルグループ傘下にある、パーソルイノベーション株式会社と事業連携を行ない、新ブランド「Mitsu-VA」としてさらなるメタバース婚活事業を推し進めています。

そのメタバース婚活イベント、一体どのように行われるのでしょうか?

まず、自治体を通じて婚活中の男女それぞれ十数人程度が募られます。この人数が肝心だそうで、たくさんいた方が良いように思いますが、あまり人数が多いと相手を覚えきれないという問題が出てくるそうです。

参加者は独自の「パートナーシップ診断」を事前に受け、自身の「婚活スタイル」を把握します。これは、簡単な質問に答えることで、婚活における自分の特性や、自分に向いた婚活のスタイルが分かるというものです。ここにも高須さんが長年、仲人として培ってきた知見とノウハウが込められているそうです。

今回、お話を伺った高須 美谷子さん。

開催日になると、参加者は自宅などにあるPCから仮想空間のパーティー会場へアクセスし、自身のアバターを使ってイベントに参加します。

メタバース上に設けられた会場で、リアルの婚活パーティー同様、男女1対1のトークタイムが設けられます。当事者2人にしか音声が聞こえないプライベートゾーンで5分ほど会話するのです。順番にすべての男女がトークを終えたら、各参加者は自己紹介と、婚活についての希望や目標を述べるなど自己アピールをします。

その後、お互いに好感を持った相手とマッチング成功。カップル発表とあいなります。ここまで参加者はメタバース空間でおよそ3時間強の時間を過ごすことになります。カップルの出会いのきっかけを丁寧に紡ぐには、最低でもそれくらい時間が必要ということでしょう。

この一連の流れの中で注目すべきは、マッチングに至るまで参加者はそれぞれ相手の容姿や職業、ひいては年収などといった、一般的に婚活に必要とされる具体的情報をお互い知らないことです。

メタバース婚活イベントの1対1のトークタイムの様子。メタバースは株式会社ガイアリンクが日本公式代理店を務める「Virbela」を利用しており、公式特約販売店であるパーソルマーケティング株式会社との協働により提供しています。(パーソルマーケティング株式会社 提供)

メタバース婚活イベントが目指すのは、参加者が“自由恋愛”に近い形で交流することです。外見はアバターですし、リアルの結婚相談所にあるような事前のプロフィール交換もありません。相手の情報を知らない状態で、仮想空間で会話を始めてコミュニケーションを図る。これによって、先入観なしで相手の内面を知ることができるのです」(高須さん)

確かにリアル婚活イベントでよく聞くのは、容姿や年収などで、まず「ふるい」にかけてしまい、相手の本質を見ることなく、結果的に良い出会いにも結び付かないということです。

メタバース婚活イベントにおいては、70~80%以上がマッチングに至るとか。この数値はリアルの婚活イベントと比べるとかなり高い数値だそうです。メタバース婚活イベントは、参加者に”内面を重視した婚活”を促すのです。

「アバターデート」で気持ちを確かめ合う

メタバース婚活イベントでマッチングしたカップルは約1週間後、これまたメタバース上のアバターデートで改めて1対1で対話します。ここで連絡先を交換したり、居住地や職業といったリアルな情報、交際に向けての率直な気持ちなどを交換し合います。

そして2人が納得すれば、いよいよリアルで対面することになります。

メタバース空間で出会い、リアルでのデートに至った後でお話を伺うと、ほとんどの方は『イメージ通りだった』と話しています。アバターだからこそ参加者は積極的に本音を話すことができ、そのためにリアルでの印象や振る舞いともほとんど乖離がないのです」(高須さん)

そしていざ、リアルデートの実現に向け、大きな存在となるのが「デジタル仲人」です。

カップル両者に寄り添いながら、さらなる婚活を進めて行くアドバイザー的な役割を果たすのが“デジタル仲人”です。場合によってはイベント当初から参加者のPC操作をサポートしたり、イベントでの不安を取り除くようなコーチングを実施したり、自己アピールについてアドバイスしたりとさまざまなサポートを行ないます」(高須さん)

デジタル仲人はマッチングした2人がリアルデートまでたどり着くよう誘導し、リアルデート後にサポートを終了します。なおマッチング後、正式交際に至らなかった場合には、相手に、良い形でお別れメッセージを伝えるサポートもします。

「デジタル仲人」とは呼んでいますがもちろん人間の担当者がいて、参加者と直接顔を合わせることはないものの、オンラインできめ細かいケアを行っています。

地方自治体で広がるメタバース婚活

ところで、メタバース婚活イベントがさまざまな地方自治体で開催されていますが、そこにはどのような事情があるのでしょう?

「現在、ご存知のとおり日本の出生率が下がっています。多くの市町村では議員や行政の皆さんが少子化を深刻な問題と捉え、さまざまな取り組みをしています。ただ地方では結婚は個人の問題であるという考え方も多く、自治体がリアル婚活パーティーを開催してもマッチングまでは世話をしない、連絡先は自由に交換してください、というような状況も少なくないのです」(高須さん)

引っ込み思案の人は何もできないまま終わってしまいますし、婚活イベントに繰り返し参加することで、周囲の目を気にしてしまう人もいるのだそうです。

このような地方でのリアル婚活パーティーにありがちな問題を解決するのがメタバース婚活イベントという訳です。

地方自治体が主催して広報紙やポスターなどで開催を告知することで、その地域住民の参加を募れるほか、その地域への移住や就職を考えている人にも興味を持ってもらえます。

運営コストを自治体が負担することで、参加費用を低額に抑えられます。結婚相談所を利用して婚活すると高額の料金が必要となってしまい、どうしても若い世代は利用しにくくなります。収入の多くない若年層でも気軽にメタバースで婚活し、高いマッチング率でカップルになることは地方自治体にとっても理想的なことでしょう」(高須さん)

若い世代ほどメタバースやアバターといった仕組みを敬遠しないこともまた、メタバース婚活が成功している一因のようです。

「2.5次元」で広がる婚活の可能性

高須さんはメタバース婚活イベントを「2.5次元の空間」を活かした婚活と捉えています。どういうことでしょうか?

「結婚相談所に所属していた時、コロナ禍に突入しリアルパーティーができなくなって、Zoomのような2D世界での婚活に移行せざるを得ませんでした」(高須さん)

そうなると、画面越しに顔は見えてもリアルにあった相手の「匂い」が感じられなくなったと言います。

一方でメタバースでは直接会話ができるしアバター同士で触れ合えます。匂いは無理でもそれに近い“人となり”が分かる。だからこそメタバース婚活は2.5次元だと考えています」(高須さん)

さらに、メタバース上ではリアル空間よりも、ジェスチャーでちょっと大げさに反応したり、飛び上がって喜んだり自由に動くことができます。そのような意味で、自分の個性を発揮しやすい=多様性があると、高須さんは言います。

カップル発表の様子。(パーソルマーケティング株式会社 提供)

この「2.5次元での婚活」で、多くの人が自由恋愛に近い婚活を体験できています。マッチングした参加者からは「直接会わないと婚活できないという固定概念がなくなった」「詳細が隠されているからこそ相手のことを感じようとする自分に出会えてよかった」というような感想が寄せられているそうです。

高須さんはかつて映像制作にも関わっていたということで、次のように話します。

「メタバース婚活はストーリーになっています。これまでスポットライトを浴びていなかった主人公たちがスポットライトを浴び、今まで縛り付けられていた常識から解き放たれるとともに、これまで認めてこなかった人が自分のパートナーだと気づいてハッピーになる、そんなストーリーを思い描いて携わっています」(高須さん)

今後も高須さんをはじめとする運営陣は“黒子”として、パーソルイノベーションと連携しながらメタバース婚活イベントの運営、デジタル仲人として婚活者のサポートを行なっていくそうです。

最後に一つ、高須さんから伺ったエピソードをご紹介しましょう。メタバース婚活イベントとアバターデートを経て、いよいよリアルデートを迎えたあるカップルの話です。

デートの場に女性が、アバターデートの時に着用していたのと同じ、赤いスカート姿で現れたのだそうです——。

メタバースが人のリアルな行動に影響を与え、恋愛をも育み、人を輝かせることができる。その証拠と言ってよいのではないでしょうか。

運命の人と出会う手段として、メタバース婚活が選択肢の一つになりつつあるようです。

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この記事を書いた人
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