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住宅、文化財、図面…XR界の超古参に聞いた建築×XRの可能性・鈴木謙一さんインタビュー

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皆さんは「建築×XR」と聞くと、どのような想像をするでしょうか?

「建築とXR・・・?メタバース上で住宅を再現するとかそういうことなのかな?」

そんなことを想像した方もいるかもしれません。

実は住宅だけでなく、なくなってしまった文化財を再現したり、図面からVRを作り上げるなど、その活用方法は多岐に渡るのです。

そんな「建築×XR」の活用事業を手掛けるのが、「超建築メタバース」や「VR建築展示場 XR EXPO」などの建築とXR分野をかけ合わせた建築DXサービスを展開しているクリーク・アンド・リバー社です。

ということで、映像、ゲーム、Web、広告・出版、作家、医療、IT、法曹、会計、建築、ファッション、食、コンピュータサイエンス、舞台芸術、 ライフサイエンス、アスリート、CXO、アグリといった18もの分野で活躍するクリーク・アンド・リバー社で建築DXサービスを展開されている方に話を聞きに行ってみました!

今回話を伺ったのは、同社でXR事業を手掛けられている鈴木謙一さん。実は鈴木さん、いま市場が拡大するXR界の“超古参”だったのです・・・!

鈴木 謙一 氏

鈴木 謙一 (Kenichi Suzuki)
株式会社クリーク・アンド・リバー社
建築グループ プロデュースディビジョン ディビジョンマネージャー / 一級建築士


早稲田大学にて建築を学んだ後、菊竹清訓建築設計事務所に入所。北九州メディアドームや島根県立美術館、長野オリンピック開閉会式会場などのプロジェクトに携わり、建築設計と企画活動を行う。

その後、建築とデジタル技術の融合によって社会に貢献する使命を感じ、VR専門企業で10年以上勤務。大手企業や公官庁、大学向けに様々なVRシステムのソリューション営業と企画を担当。愛知万博では、大規模建築では国内初となるVR技術を用い、設計の合意形成と広報への活用を実現し、革新的なアプローチが評価される。

さらに、太陽光発電関連製品のトップメーカー勤務を経て、クリーク・アンド・リバー社に入社。建築グループのプロデュースディビジョンマネージャーとして、事業開発を行っている。これまでの多彩な経験、特に建築、環境、DX分野の知見や経験を融合することで、建築を基軸により良い未来を創造するため、日夜新しい取り組みに従事している。

建築DXサービスは建築家の価値を向上させる取り組み

吉尾

なぜ、クリーク・アンド・リバー社はXR部門に携わったのでしょうか?

鈴木さん

弊社はかなり色々な専門分野に関わって事業展開しています。当然XRの部署とかゲームチームなどの所属などがあります。

私は建築グループに所属しています。プロデュースディビジョンというところに所属して、そのマネージャーをやっています。

実は、建築XRサービスは、XR部門ではなくて建築グループでのサービスです。

吉尾

なるほど、XRの部門ではなくて、建築部門のサービスなんですね!

鈴木さん

はい、我々のミッションとしては建築のプロである一級建築士の方の生涯価値向上を図り、クライアントに還元するということを目指しています。自社の理念を、建築に当てはめて考えたときに生まれたのが「建築DXサービス」です。

この発想は、もともと私自身は設計の人間だということもあるのですけど、VRのコンテンツ開発を10年以上前からやってたという経歴も関係しています。

「2005年の愛・地球博からXR事業やってました」

吉尾

え?そんな昔からやられていたのですか?

鈴木さん

今、私の年齢は52歳なのですが、20代のころのまだVRという言葉がない時代から、今でいうXRという分野に携わってきました。

吉尾

超古参じゃないですか!

鈴木さん

学生時代にCG(コンピューターグラフィック)をやっていて、大学院を出て、著名な建築家のもとで働いていましたが、社会人になってからもずっとCGなどをやっていました。

そして、CGでの建築の設計をどのようにやっていけばいいかと考えていたところ、20代後半の時にたまたまVRの専門会社というものを見つけました。

当時はVRと言っても、立体視だとか、ものすごい大きな冷蔵庫みたいなサイズのマシンで投影するなどの方法で実施していたんですよ。

それを、自動車の会社であったり、JAXAなどのイベントや展示会で行っていました。

吉尾

最近になって生まれたアイディアではなくて、20年以上前から鈴木さん自身が行ってきたことだったのですね。

鈴木さん

そして、ご縁があってクリーク・アンド・リバー社に入社するときに、建築とデジタルを融合させたいという想いがあり、今の建築DXサービスにつながっていきます。

入社前の仕事の中で、いろんな建設会社やゼネコンなど、VRの前身となる仕事をやらせていただいたのですが、愛・地球博って覚えています?

吉尾

もちろんです。当時高校生の時に愛知万博(愛・地球博)に行ったので、なんとなく現地のイメージを記憶しています。

鈴木さん

あの会場をプレゼン用にVRですべて作ってたのが私なんですよ。つまり、2005年の愛・地球博からXR事業やってました。

吉尾

え、あれだけの広い敷地をすべて、今でいうVRで作ったんですか?

鈴木さん

愛知万博は、各パビリオンを外装だけ日本側で用意して、中は各国の展示を実施するという方式でした。その設計において、環境負荷をなくすためにいろんな工夫をしようとした試みの一つです。

パビリオンの説明のために、各国の代表に模型を作って持っていくのですが、「これではわからない」という声などがあって、どんどんと模型も大きくなっていくのですが、模型を持っていくというのにも限界があるじゃないですか。

実際に作るわけにもいかないので、どうしようと思っていたところ、当時のTOYOTAの会長の豊田章一郎氏が「VRでできるよ」とおっしゃられました。

「TOYOTAさんがやってくれるのかな」と思ったら、「いや、TOYOTAは車しかやりません」ということで、私のところに相談がきました。

そこから数億円規模のプロジェクトとして進行し始めました。


吉尾

数億円ですか・・・確かにあの規模だとそうなりますね。


鈴木さん

ものすごく大変でした。

ただ、実際にVRとして作成して、見ていただいた時の反応を見て、その時にもう「これだ!」と確信に近いものがありました。

やはり模型で見るよりもわかりやすいんですよね。

模型ではなくリアルなスケールで見えるということがどんなに重要か、模型を見て想像するのではなく体感してもらうということがどんなに重要かということが、皆さんの反応を見てわかって、「これはすごいな・・・」と思ったんです。

その場で意見を聞いて、どんどんいろいろな形に変更していくことも、最初からプログラムとして組み込まれていたので、日々VRを更新していくことができました。

実際の様子

(提供:一般財団法人 地球産業文化研究所)

20年前はVRもARも全部が「VR」だった

吉尾

ちなみになのですが・・・当時からVRという言葉だったのですか?


鈴木さん

その当時からVRでした。

VRの中にARとかMRなどが新たに入ることになって、最近XRと呼ばれるようになりましたが、昔はVRだけでした。つまり、20年前はVRもARも全部が「VR」だったんです。VRという言葉にARも技術としては内包されていましたが、我々はVRと呼んでいました。

当時もヘッドマウントディスプレイはあったのですが、もう高級外車が買えるぐらいの値段でした。

もっと手軽に使えるものはないか我々も探しましたが、あったとしても軍事用のもので、価格も数千万円するほどでした。しかも当然、今よりも画質など様々な点で悪かったです。

そのような時代だったんで、大きいスクリーンで再現していました。

ヘッドマウントディスプレイがないので、部屋全体をスクリーンで覆って、そのスクリーンが立体的に見える「液晶シャッターメガネ(※)」をかけて見るという方法で行っていました。

このメガネについているセンサーによって、メガネをかけている人の視点を感知し、その情報をコンピューターが取り込みスクリーンに表示する内容を書き換えることで視界が立体的に見えるようになるんです。つまり、この液晶シャッターメガネがヘッドマウントディスプレイみたいなものになるんです。

※液晶シャッターメガネとは:右目用の画像と左目用の画像を高速に切り替えて表示し、それと同期してメガネが左右それぞれの視界を相互に遮ることで、視差を生み出して3次元表示させるメガネのこと

吉尾

うわ!ものすごい大がかりですね!

鈴木さん

そうなんですよ。

しかし実施した甲斐もあって、その時にすごく理解を得られました。

実際に見た人には、模型だけの時では伝えられなかった「あれ、これ、それ」という簡単な言葉だけで伝えたいことが伝わるっていうこともわかったし、何よりも体験してしまうと自分が現地に行った際も、工事現場を見るだけで全部想像できるんですよ。

「これがこうなるよね」「ここはあれね」「ここがこうできて建物できますよね」といった具合に。

何百回、何千回も見ていて、もう頭に3Dで全てインプットされているので、その場を歩かなくても分かるぐらい理解できていました。

やっぱりこの3D、4Dの力はすごいなと思い、可能性を強く感じました。

建築家・お客さんのために細部までこだわっているから「6DoF」

吉尾

建築DXサービスは「6DoF」に力を入れていますが、そういったご経験からこだわっている部分なのでしょうか?

※6DoFとは:6つの方向性の自由度を持って視点を変えられること。その場で「首を上下に振る」「首を左右に振る」「見渡すように首を回す」ことに加え、歩行などの手段でユーザー自身が「前後・左右・上下に移動」をすることが可能で、ユーザーの物理的な移動に表示側のコンテンツが連動する。

▽参考記事:3DoFと6DoFの違いとは?【知っておきたいXRの専門用語】
https://www.xr-lifedig.com/beginner/240325_01

鈴木さん

はい、建築にXRを取り入れるにはその細かな点にも気を付けてほしい、理解してほしいと思っています。

ただの立体映像とかムービーなどは、それはそれであってもいいんですけど、建築で本当に力を発揮するのは、細かな再現性だと思っています。

吉尾

例えば現在、旅館のVRを作ったりとか、飲食店をVRで再現したりするサービスなどがありますが、それらはなんとなくの雰囲気がユーザーに伝われば良いみたいなものが多く、結構安価な値段でできるようです。

建築においては6DoFなどで、しっかりと細部までこだわっていないと、「建築においてのVR」になっていないということでしょうか?

鈴木さん

はい、細部までしっかりと再現してほしいという想いを、何十年も前から抱いてきました。

建築物がVR化していくことは、設計者にとっても、お客さんにとっても、建てる前に全部見られるようになるので、めちゃくちゃいいはずなんですよね。

ただ、なんとなく全体を再現してしまうだけだと、VR酔いなどをしてしまって、そのあと見てくれなくなるので、細かさや滑らかさは大事にしています。

これからも建築物を再現するサービスは出てくると思うのですが、やはり細部までこだわらないと利用してくれないと思っています。

一度、気持ち悪いと思ってしまった人は、二度とVRゴーグルを被ってくれないんですよね。

そうすると、この家売れなくなるんですよ!どうしてくれるんですか!ってなると思います。

細部までのこだわり、滑らかさ。本当に大事だと思っています。

吉尾

確かに、私もVR酔いがひどかったので、滑らかさは本当に重要だと思います。建築においても、お客さんにおいてもその細かな点が重要だと?

鈴木さん

はい。VR空間に図面から起こした建築物があれば、パンフレットなんかいらなくなります。

タイルの写真を一枚だけ見て、「これが外壁になります」と言われてもピンと来なかったり、想像するのが難しかったりしますが、VR上なら簡単に変更できてしまいますよね。

天井の色をこうしたいと思っても、モデルハウスではそうはいかないですが、VR空間ならパパっと変更できてしまいます。

ただ、なんとなく外側だけ再現されていてもお客さんも建築家もクリアに想像できないですよね。

吉尾

確かに、私が住宅の購入を検討しているときも、ぶ厚いパンフレットを渡されましたが、正直ピンときませんでした。

鈴木さん

これあんまり言っちゃいけないのですが、この部屋の壁紙も、この一部だけ見たらいい感じになるかなと思っていたんですが、実際にできた後に見たらちょっと違和感がありました。

こういう後から感じる違和感も、事前にVR上で確認できていれば、減っていくと思っています。

吉尾

当時は、VRで建物とか細部まで再現しようとしている人や会社などは他にあったんでしょうか?

鈴木さん

VRの専門会社は、当時ほとんどなかったですね。

ソフトウェア会社などでVR専門でやってるんではなくて、立体視をちょっとやってますとか。

一時期、立体で表示するテレビとかあったのを覚えてますか?VRメガネとか。

吉尾

確かに以前、ありましたね。ゲームだとニンテンドー3DSなんかもありました。

鈴木さん

その時に(世間的には)「VRってそういう感じのものなんだ」みたいな広がりを感じましたが、私は「全然違うのになと・・・」と思っていました。

世の中的にも、自身のモチベーション的にもちょっとだけトーンダウンしてしまった気がします。

正直なところ、流行ってないじゃないですか。誰ももうメガネを付けていないですよね?あれ売ってないじゃないですか。

吉尾

確かにもう見かけないですね。あの時はあまり立体的に見えることに期待感はなかったように思います。

鈴木さん

でもOculus(現:Meta Quest)が出た時にはかなり感動しましたよ。Facebook(現:Meta社)がこれを出してくれるんだなんて、幸せな時代だと。

ただ、逆にそういった安価で便利なものが出たから「VRで再現できるからとりあえずやってみよう」という、流行っているから生まれているサービスのように見えてしまっています。

やはり流行を追いかけるだけでは、すぐに投げ出してしまうのかなと思います。何事もそこに「情熱」がなかったら途中で折れてしまうのかなと。

「建築グループ」の立ち上げ当時からの想い

鈴木さん

そういった経験がありつつ、クリーク・アンド・リバー社という現在の会社に来て、建築グループの立ち上げ時から私は在籍しています。そして、建築士のためにということで、建築グループを立ち上げました。

弊社の会長からずっと「VRの技術はどうやったら建築士のためになるか」と言われています。

例えば建築の場合、自分が想像するものや、設計する家などが、どのようなものになるかを見せるということがなかなか難しいです。

家の場合であれば、ハウスメーカーさんだったら、お金をかけて展示場などを開いて見せることもできますが、建築士、建築家単位では、そこまでお金をかけられません。

吉尾

住宅展示場などもかなり広い土地で作らないといけないですもんね。

鈴木さん

でも「建てればいいじゃねえか」って言うわけですよ。富士山の麓に安い土地があるだろうって。

確かに土地が安いかもしれない。でも、いくらかかるかわからないですし、使わない建物を建てるなんて環境にもよくないと思い、その時に「では責任持ってVRでやります」と言いました。

そして、現在の建築DXサービスに至ります。

吉尾

確かに環境のことなどを考えれば、VR空間に再現できたほうがいいと思いますが、まだ今よりもVRなどが一般的でないときの話ですよね?

鈴木さん

そうなんです。ただ Oculus(現在のMeta Quest)が出たときに、Facebook(現:Meta社)が出すぐらいだから、VRが一般的になるだろうという予感があり、当時何もソフトがない中で、一から作り始めました。

その時から大事にして生きているのが、「空間共有」という点です。

同じ空間で、同じものを見て、それについて会話できるということが大事だと思っていました。さらには複数人で入れるようなシステムを作ろうということで、いろいろ探しました。

吉尾

たしかに、住宅展示場でも実際に同じ空間で同じものを見ることで暮らしのイメージが湧きますね。

鈴木さん

現在、ホームページがあり、住宅系に特化してしまっていますが、実は我々がメインでやっているのは、どちらかというとハウスメーカーだとか、建材のメーカー向けのVRコンテンツの提供や、文化財などをVR化してしまうということをやっています。

パートナーの企業では、実物の設計をしていたりしますが、弊社ならVRで実際の建築物を建てなくても見せられるということで、それをサービスとして加えていったって感じですね。

建築物っていうのは、一般の戸建てもあるし、もっと大きいものもあります。逆に戸建ての受注は弊社ではそんなにないんですよね。

今やってるのは主に物流倉庫のお手伝いとかマンションやビル、最近だと水族館などを弊社で作ったり、いろんな施設で利用してもらっています。

そして、建築家にも様々な特徴があります。例えば工場とか得意な人もいるし、戸建てが得意な人もいるし。

思考もみんなバラバラです。

VRサービスを切り口にしているというよりは、そもそもいろんな建築に関するお仕事の依頼があって、その中の一つとしてVRのサービスを提供しています。

吉尾

具体的にどのようにVRコンテンツを作っているのでしょうか?


鈴木さん

具体的に言うと、ゲームなどで使われているUnreal Engineという開発エンジンを使って、作ったものをムービー化したりとか、ゆくゆくはこのUnreal Engineで作ったものをプログラム化したものをデジタルショールームにしていきたいです。

そのほかですと、文化財だと図面から、今はなくなってしまったものを再現することもやっています。

建築物のVRは作るのが結構難しくて、建築のことが分かっていないと作れないです。

例えば、さっき話した文化財などの再現は、写真や当時の資料から何とか立体的に再現しないといけないので。

VRで作っているのは「実在しないもの」

吉尾

それで言うとカメラも性能が上がってきて、VR空間の撮影ができるものが出たり、それらを使って撮影するサービスなどが出始めたりしてきていますよね。

鈴木さん

弊社はそういったサービスとは別で、「実物がなく再現する必要があるもの」を作っていたり、「まだ実在しておらず、これから作るもの」をVRで作っているというのが違う点です。

VRで再現できてしまえば、モデルハウスはいらなくなるじゃないですか。

モデルハウスをそのまま再現するっていう方法もあるとは思うんですけど、壁の色が違ったり、照明の位置が違ったり、モデルハウスの再現がこれから建てる家を再現できているのかというとそうではないということです。

建物をVR化しているのではなく、図面からVRコンテンツに再現しているということです。そういったことができるのが建築とXRの両方の技術がある弊社の強みです。

実際に見せていただいた


鈴木さん

こちらですが、先ほどお話しした、Unreal Engineっていうゲームなどで使われているエンジンで作ったVRです。

吉尾

え?これは実写ではないのですか?

鈴木さん

実写に見えるでしょ?実はこの動画自体はムービーにしてありますけど、これはVRなので中に入って視点をリアルタイムで動かすことができます。

この動画は要するにゲーム内の映像を録画したものです。

吉尾

・・・すごい!これだけリアルに描画されているととてつもない没入感が得られそうですね。

鈴木さん

実際は、よく見るとちょっと違和感を感じる点などありますが、これよりも実はもっと解像度もどんどん上げられます。

吉尾

何も言われなければ、わからないですね・・・。


鈴木さん

実はもう今のVRゲームの進んでいるものはこのぐらいの再現度で作られています。ただ建築の分野ですと、まだまだ再現度を満足のいく水準までにはできていません。


以前は、プラットフォームの部分も用意していましたが、今はVRChat(※)に移行しています。VRコンテンツを発信できるサービスも増えてきて、もう我々が作る必要なくなったんですよ。

※VRChatとは:VR空間内でアバターを作成し、ユーザー同士で交流やイベントを楽しめるソーシャルVRサービスのこと。

建築をVR化するっていうコンテンツのところは、まだまだやらなきゃいけないですけど。

あと、メタバースはFortnite(※)に移行してます。Fortniteに現存する建物とかをちょっとずつ作っています。

※Fortniteとは:2017年に米Epic Gamesがリリースした全世界で4億人以上の登録アカウントを持つ世界的な人気オンラインゲーム。最も人気の「バトルロイヤル」モードは100人のプレイヤーが、同時に巨大な島に上陸し、武器やアイテムを収集しながらバトルを行い、最終的に生き残った1名(もしくは1チーム)が勝利するというルール。「クリエイティブ」モードではオリジナルのメタバース空間を作成することもできる。

(参考:建築DXサービス|株式会社クリーク・アンド・リバー社

これは展示場のイメージなんですけど、モデルルームのような建物がいくつか建てられており内見ができます。最近この手の仕事もちらほら出てきてます。

要するにハウスメーカーさんとかの場合、Fortnite内で展示場を作ることができるということです。

VRの良いところは、現地に行く必要がなくて、また別の建物に移動してということが容易にできる点ですね。しかも複数人同時に見ることができる点も優れているかなと思います。

そこに、初めから案内するための担当者が常駐していて、紹介するとか。

今後の建築×VRの未来

吉尾

今後はどのように建築がVR化していくと思いますか?


鈴木さん

「建物の3D情報をデータとして持っておくのが大事」という世の中になると思っています。

現在は、自分で家を買いたいと思った人たちが、図面だけ渡されて、頭でなんとか完成した家を想像して・・・みたいなことをしていますよね。しかし、家は高い買い物ですから、「これ本当に大丈夫かな」「生活導線としても問題ないかな?」など戸建てを買う人の悩みなどは尽きません。

その悩みは、VRの普及によって解消されていくと思います。

具体的には、AIで作ったVRの建築物をVR空間上で見せることで、そのワールド内で住宅メーカーの担当者が顧客と会話をして、「この部分は法律上でこうで」とか「壁紙はこうで」とか、顧客はいろんなアドバイスをもらうことで、実際に家を建てる時にはめちゃくちゃいい家を建てられるようになると思うのです。

将来は、家の引き渡しのときに、実際の建物と合わせて、設計の時に作った建物の3D情報データも顧客に納品されるような未来が来ると思っています。

なので、設計者が、二次元の図面からもっと三次元まで作れるようになっていければと考えています。

そうなることで建築家一人ひとりの価値も向上し、お客様にとっても良い未来が訪れると思っています。


吉尾

長年XRに関わってこられた鈴木さんには今後もまたお話伺えたらと思います!ありがとうございました!

▽関連サイト
VR建築展示場 XR EXPO | 好きと住まいを探せる注文住宅
クリーク·アンド·リバー社が提供する建築DXサービス

(文:吉尾 峻)

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この記事を書いた人
XR LifeDig 編集部サムネイル
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