2024年7月3日~5日、最新のXR技術が集まる展示会「第4回 XR総合展 夏」が東京ビッグサイト(東京・江東)で開かれました。XR市場は右肩上がりで広がっていくことが、さまざまな調査により予測されていますが、この展示会の賑わいぶりは果たしてどうだったのでしょうか? 同展示会事務局の担当者さんに、ずばりお話を伺いました。
盛況だった「第4回 XR総合展 夏」
「XR総合展」は文字通り、XRに特化した展示会です。毎年、夏と秋の2回開かれ、初開催から今年で4年目を迎えます。XRを活用したさまざまな製品・サービスを提供する事業者が出展し、それらを導入しようとしている、製造・建設・不動産・医療・エンタテインメント業界などの人たちが来場します。
「第4回 XR総合展 夏」の出展社は約80、来場者数は同時開催展含め4万6,177人を記録しました。出展社と来場者、双方から「今年は盛況だった」との声が聞かれました。同展示会事務局のRX Japan株式会社 主任(国内企画営業担当)・川島 拳大(かわしま けんた)さんも、今回の来場者数について「ひとまずホッとしている」と語ります。
では早速、第1回からの来場者の推移を見ていくことにしましょう。XR市場が右肩上がりで広がる予測を反映し、XR総合展の来場者数も増えているのか――?
・第1回(2021年開催):2万4450人
・第2回(2022年開催):4万4663人
・第3回(2023年開催):4万7092人
・第4回(2024年開催):4万6177人
※「XR総合展 夏」と同時開催「コンテンツ東京」「メタバース総合展 夏」の来場者数を合算した人数
なるほど。第1回から第2回にかけて飛躍的に数字が伸び、第3回も増えていますが・・・。あれ? 第3回から第4回にかけてちょっと減っていません? 川島さん! どういうことですか?
「確かにそうですが、この数字をとてもポジティブにとらえています」(川島さん)
詳しく話を聞いてみましょう。
フェーズが変わってきたXR市場とメタバース市場
まず、上に示した来場者数は、「XR総合展 夏」と同時開催された「コンテンツ東京」「メタバース総合展 夏」の来場者数を合算した数字であることに注意する必要があります。
ここで「メタバース」について少しおさらいをしましょう。「メタバース」とは、インターネット上の仮想空間で自分の分身(アバター)を操り、人と会話したり買い物を楽しんだり、さまざまな活動を行うことができるサービスのこと。今回の展示会では出展社の事業内容により、XR総合展とメタバース総合展は“住み分け”をしておりました(ちなみに今年11月開催の秋展より「XR・メタバース総合展」として2つの展示会を統合して開催をしていくそうです)。
その上で川島さんは、「国内メタバース市場が、これまでと異なるフェーズに入ってきたと見ている」と言います。
「2021年10月28日に旧FacebookがMetaに社名変更しました。これをきっかけに世界中で『メタバース』という言葉が注目を浴びるようになった。その影響を受けて第2回(2022年開催)の来場者数がグンと跳ね上がり、続く第3回(2023年開催)も来場者数が伸びたと分析しています」(川島さん)
一躍注目の的となったメタバースですが、「さまざまな企業が導入した結果、うまくいった事例と、そうでない事例が出てきたと思います。もちろんメタバースは今後さらに人々にとって当たり前のものになっていくと思いますが」と川島さん。
つまり現状、国内のメタバース市場はやや落ち着いた状態にあるというのです。今回の来場者数の減少は、このような背景があったことも要因の1つだと川島さんは見ています。
一方、XR総合展の方は「例年より盛り上がった」というのがおおかたの評価のようです。
「現在、出展社さまのお声を集めているところですが、早くもお褒めの言葉をいただいております。例えば、XR総合展に何度もご出展いただいている複数の企業さまから、『今年は一番リードが獲得できた(来場者と名刺交換できた)』というお声を頂戴しています」と川島さん。
やはりXR市場は賑わいが増しているのです。
出展社側からも「今年は盛り上がった」との声
次に、今回の「第4回 XR総合展 夏」の賑わいがどうだったのか、出展社の声を聞いてみましょう。お話を伺ったのはテックファーム株式会社 アカウント戦略本部マーケティング部の戸田 朱花(とだ あやか)さんと、同社 開発本部2 コマース&ロジスティクス部の佐久間 康之(さくま やすゆき)さんです。
テックファームは25年以上の歴史を持つシステムベンダー。システム開発に最新技術をいち早く取り入れることで定評があります。2010年代半ばからXRのシステム開発に着手し、さまざまな企業にソリューションを提供してきました。
「今回の『XR総合展 夏』ではサプライチェーンを例に、当社の『ビジネス向けXRシステム開発』の事例の数々を紹介しました」と戸田さん。
サプライチェーンの各プロセス、「生産・製造」「物流」「集客」「販売」「サポート」「新サービス/サービス拡張」において、それぞれどんな形でXRを活用できるか、具体的に展示で示したそうです。
同社のブースではXRデバイス8機種も展示しました。
「用途により適したデバイスがありますから、実際にお客さまに使っていただくためにご用意しました」と佐久間さん。
Apple Vision Pro、Meta Quest 3、Meta Quest Pro、Magic Leap 2、XREAL Air 2、HoloLens 2などがズラリと並ぶ様子は、会場でもひときわ注目を浴びたそうです。
さらに、来場者に同社のXRシステムを“触って”もうらため、「金魚すくい」のデモも実施。
「XRデバイスを装着すると、空中に“水玉”が浮かんでいるのが見えます。その水玉の中にいる金魚をすくって遊ぶというデモです。3種類の異なるデバイスを同時につなぐことができ、デバイスごとに見え方・操作性がどう異なるかを試すことができます」と佐久間さん。
肝心の会場の盛り上がり、そして出展効果についてはどうだったのでしょう。
戸田さんは次のように語ります。
「良かったです。会場全体が盛り上がっていましたし、当社のブースにもお客さまが次々と訪れ、絶えることがありませんでした。製造業の方々を中心に来場者さまと名刺交換させていただき、良い商談につなげることができそうです」
戸田さんに、展示会だからこそ得られるメリットについても伺いました。
「来場者(潜在顧客)と直接お会いして、生の声を聞けたのは大きいですね。例えば今回の展示会で、『すでにXRを導入している』というお客さまが、思ったより多くいらしたのには驚きました。あと、物流業界とは関係のない来場者さまから、当社の物流XRシステムについて強いご関心をいただいたり。お客さまが抱えている課題を新たに発見することができました」
プレーヤーが力を寄せ合わせることで市場は盛り上がる
最後にRX Japan川島さんから、次回2024年11月の会期に向けた抱負を伺いましょう。
「今最も注目されている技術は何か、XRにもメタバースにもアンテナを張りながら、いち早く次の展示会に取り入れ、ブラッシュアップしていきます。今年の秋展から『XR・メタバース総合展』として開催してまいりますが、既存の枠組みにとらわれず常に変化し続けていくことが重要だと考えています」(川島さん)
その上で目指していきたいのは「規模感」だと川島さんは言います。さらに多くの企業に出展してもらい、来場者を増やすことです。
「大きく開催することは、出展社さま・来場者さまにご満足いただくためにとても大切。それがXR業界発展につながっていくと考えています。同じ方向に向かっているからこそ、ぜひ皆さまと一緒に、顧客視点に立ちながらXR・メタバース市場を盛り上げ、社会実装に貢献できる展示会を開催し続ける所存です。ぜひ皆さまにもご出展、ご来場いただきたいです」(川島さん)
今回、主催企業であるRX Japanと出展社のテックファーム、双方のご担当者にお話を伺い、どちらもXRに対して熱い思いを抱いていることが伝わってきました。システム開発会社、展示会開催企業、デバイスメーカー、そしてユーザー・・・さまざまなプレーヤーが力を合わせることにより、XR市場が切り開かれていくのだと実感しました。XR総合展、そしてXR市場のさらなる盛り上がりが楽しみです。