今後、XR市場は右肩上がりに成長していくことが予想されています。確かにさまざまなXRデバイスが登場していますし、エンターテインメントやゲーム分野のみならず、医療や教育、防災といった分野でもXRが活用されています。
市場の動きを客観的に示すデータがいくつか公表されているので、詳しく見てみましょう。
2023年第4四半期のAR/VR市場拡大は「Meta Quest 3」が牽引
市場調査会社・IDCが、2023年第4四半期(10~12月)のAR/VRヘッドセットの世界市場調査を行ない、その結果を2024年3月24日に発表しました。まずはこちらを参照していきましょう。
本調査によると、2023年第4四半期にAR/VRヘッドセットの世界市場は前年比で130.4%成長したとのことです。調査の中でIDCのMobility and Consumer Device Trackers部門のリサーチマネージャー・Jitesh Ubrani氏は、「Metaは数四半期前にはPicoおよびSonyによってシェアを奪われたものの、ハードウェアの継続的な補助金とMeta Quest 3の発売によって着実にシェアを獲得している。Appleの参入や、他のベンダーから新デバイスが登場することがプレッシャーになるかもしれないが、Metaのリードは、年内中は揺るがないだろう。これは同社の低価格・大量生産戦略によって他社と差別化を図っているためだ」と述べています。
つまり2023年第4四半期のAR/VRヘッドセット市場の伸長は、Meta Quest 3の存在が大きく影響しており、2024年もその影響は続くと予測されているということです。本調査の中では、Metaのシェアの伸びがよく分かる以下のようなグラフも提示されています。
(出典:AR/VR Headsets Surged During the Holiday Season 2023, According to IDC|IDC)
一方で、2023年を通年で観測するとAR/VRヘッドセットの出荷数は2022年比で23.5%減少しているとのこと。IDCの分析では、これは2022年の新型コロナウイルス禍による、いわゆる「巣ごもり需要」からの揺り戻しであり、需要が通常の状況に戻ったことと、2023年の上半期に新製品が登場しなかったことが原因とされています。
一方、IDCは別の調査で、2024年には市場は回復し2023年比で44.2%増に急回復し、デバイスの出荷台数も970万台になると発表しています。2028年にはデバイスの台数が2470万台に達し、5年間の平均成長率は29.2%と予想されているそうです。ユーザー層がゲーマーから一般消費者へと広がっていくことがその大きな要因とされています。
日本市場も確実に拡大、さらに今後に期待
世界市場についてはこのような動きを見せているAR/VRヘッドセット市場ですが、日本市場ではどうなっているのでしょうか?
IDC Japanが日本国内における2023年のAR/VRヘッドセットの出荷台数についての調査を見てみましょう。それによると、2023年通年の国内AR/VRヘッドセット出荷台数は前年比で67.4%増の56.6万台となったとのことです。
この統計では、ARヘッドセットとVRヘッドセットを分けて集計しており、ARヘッドセットが前年比32.3%増の4.8万台、VRヘッドセットは前年比71.6%増の51.7万台とされています。IDC Japanの分析では、ARヘッドセットの伸長はXREALに代表されるような、比較的安価なコンシューマー向けデバイスが数多く売れたこと、VRヘッドセットの伸長にはソニー「PlayStation VR2(PSVR2)」が貢献したとされています。
(出典:2023年通年 国内AR/VRヘッドセット市場規模を発表|国内ARヘッドセット市場|IDC Japan)
(出典:2023年通年 国内AR/VRヘッドセット市場規模を発表|国内VRヘッドセット市場|IDC Japan)
2023年から2024年の出荷台数の推移については、ワールドワイドでは減少しているものの国内市場では順調に増加しています。日本におけるXR市場の伸びには期待できそうです。
しかしIDC JapanのConsumer Devices部門のマーケットアナリスト・井辺将史氏は、この統計を受けて「ARは特にコンシューマー向けデバイスが急成長しているが、主要なユースケースがなく、依然として安定的な成長軌道にあるとは言えない。またVRはARに比べるとゲーム向けのユースケースが確立されており、安定的な出荷が見込まれるが、期待されているような成長軌道にはまだ乗れていないだろう」とやや慎重なコメントもしています。
2024年はさらに市場が広がりそう
ここで紹介したデータはすべて2023年のAR/VRヘッドセット出荷台数ですが、当然、XR市場全体に影響を及ぼすことになります。大きく注目されているMeta Quest 3は2023年10月に発売され、2023年第4四半期にシェアを伸ばすとともにXR市場の拡大にも貢献したことは明らかです。そして2024年に注目すべきは、Apple Vision Proの登場でしょう。
ご存知のとおりApple Vision Proは2024年2月2日にアメリカ国内で、2024年6月28日には日本、中国本土、香港、シンガポールなどでの販売が開始されました。それに伴い、2024年のXR市場がさらに活気づく兆しがあります。前出のIDC Japanのマーケットアナリスト・井辺氏も「常に新たなユースケース開発や発見が期待されている市場で、その点において注目度の高いAppleのVision Proがローンチされた意味は非常に大きい」とコメントしています。
世界レベルでは堅調な拡大をみせ、日本でもさらなる拡大が期待されているXR市場。この2024年には実際どういう動きを見せるのか、期待して見守っていきたいものです。