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仮想スクリーンを並べて遊ぶ? 仕事する? 〜OSアップデートから読み解くMeta Questのこれから〜

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2023年10月に発売されて以来、大きな人気を博しているMetaのVRヘッドセット(VRゴーグル)「Meta Quest 3」

これに搭載される「Meta Horizo​​n OS(旧Meta Quest OS)」のパブリックテストチャネル(PTC。OSやアプリなどを正式リリースする前に、一部のユーザーに公開するサービス)版のバージョン67が2024年6月25日に配信されました。

新たなOSはこの7月に正式にリリースされましたが、リリース前からユーザーから熱い注目を浴びる新機能があり、アメリカのTech系情報サイト「The Verge」をはじめとする海外のさまざまな情報サイトで報じられていました。

Meta Quest 3の性能をさらに引き上げるのではないかとささやかれるその新機能。さていったいどのような機能なのでしょうか?

OSアップデートで実装された注目の「新機能」とは

今回のOSアップデートで新たに搭載された注目の新機能とは、「新しいウィンドウレイアウト(New Window Layout)」機能です。

正式リリース前にPTC版バージョン67(PTC v67)を試用できたのはごく一部のユーザーでしたが、「The Verge」の記事内ではこの機能についてX(旧Twitter)に動画で投稿したLuna氏(@Lunayian)のポストを引用しています。

このポストを見ると分かる通り、PTC v67で搭載された新しいウィンドウレイアウト機能では、ウィンドウをドラッグして好きな場所に移動したり、ウィンドウのサイズを変更したりといったことが可能になりました。また最大6つのウィンドウを表示できますが、そのうち3つのウィンドウを並べて固定配置でき、残りの3つは仮想スクリーンの任意の場所に配置できます。さらに、特定のウィンドウをフルスクリーン表示したり、曲面ウィンドウ表示と平面ウィンドウ表示を切り替えられたりするほか、仮想スクリーンの明るさを下げる調光機能も採用されています。

Meta Quest 3はApple Vision Proを追従する?

(出典:Meta Quest 3|Amazon

この新しいウィンドウレイアウト機能の概要を耳にして「なんだ、ちょっとしたUIの変更か・・・」と思う人もいるかもしれません。しかしこの新機能はMeta Quest 3の仮想スクリーン環境を大きく変え、基本機能を大きく底上げするものとして注目されています。

そもそも「仮想スクリーン(virtual screen)」とは、仮想空間に仮想的な画面(スクリーン)を表示する技術です。仮想スクリーンはCGで作成したVR空間のこともありますが、外部のリアルな空間を取り込んだMR空間でも実現可能です。もちろんMeta Quest 3も、VRおよびMRの仮想スクリーン内にウィンドウを表示して、アプリやコンテンツを利用可能です。

しかし従来のHorizo​​n OSでは仮想スクリーン内に表示できるウィンドウは最大3つで、画面の位置を「近距離(Close View)」か「遠距離(Far View)」に切り替えられるのみで、ウィンドウのサイズや向きを自由に変更することができませんでした。それに比べると、新しいウィンドウレイアウト機能によって、Meta Quest 3の仮想スクリーンの使い勝手は大幅に柔軟になることでしょう。

そして今回の新機能を報じた「The Verge」をはじめ、各Tech系情報サイトは、このウィンドウレイアウト機能によって、Meta Quest 3が「Apple Vision Pro」に機能的に近づくことを狙っているのでは? と推測しています。

Meta Quest 3が目指すのは「汎用性」か

Appleが日本でも発売を開始したApple Vision Proについてはもはやここで説明するまでもないでしょう。その仮想スクリーンでは複数のウィンドウを開いて自由に配置でき、それぞれのサイズについても自由に変更できる仕様になっています。まさにApple Vision Proが掲げる「空間コンピューティング」を実現する基盤として、使い勝手のよい仮想スクリーンに仕上がっています。

新しいレイアウト機能によってMeta Quest 3は、より強力な仮想スクリーンを獲得することになりそうで、その点においてはApple Vision Proに近づいた、という言い方もできそうです。

さらに「The Verge」の記事では、Meta Quest 3の広告戦略について、以前はゲーム一辺倒だったものの、最近は、仕事の生産性や生活の質を高める可能性を強調する広告が増えてきたとも指摘しています。

Metaは、今回の新しいウィンドウレイアウト機能によって、必ずしもAppleを追従しようとしているだけではないのでしょう。Meta Quest 3をより実用的、本格的、そして汎用的なデバイスとして利用可能にすることで、さらに広い範囲のユーザーを獲得することを目指しているのではないかと予測することができそうです。

今回の新たなOSが、Meta Quest 3の普及を後押しすることは間違いなさそうです。新幹線や飛行機の中で、Meta Quest 3をかけて仕事をするビジネスパーソンを見かける機会があるかもしれません。いや、ただゲームで遊んでいるだけの可能性もありますが・・・。ともかくXRがより社会に普及していくための、追い風となることでしょう。

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