
色域とは|人の目で認識できる色の範囲内から、使う色の範囲を定めたもの
色域(しきいき)とは、人の目で認識できる色の範囲のうち、液晶ディスプレイやデジタルカメラ、プリンターなどの映像や画像の出力機器で表現可能な色の範囲のことです。
人間の目で見ることができる色の範囲(可視領域)のうち、デジタル機器で表現できる色域は限られています。
また、機器ごとに表現できる色域には違いがあるため、異なる機器の間で色のデータをやりとりする場合には、元データの色を正しく再現するための対策も必要になります。
代表的な4つのデジタル色域規格
色域には団体や企業が独自に定めた規格が複数あります。
たとえば紙への印刷では、Cyan(シアン)・Magenta(マゼンタ)・Yellow(イエロー)・Key plate(キープレート≒黒)の4色で色を表現する「CMYK」方式が主流で、「Japan Color 2001 Coated」「Japan Color 2011 Coated」などの標準印刷制度が作られています。
一方、XRデバイスも含むデジタル機器向けにも色域規格があり、種類もさまざまです。
ここではデジタル機器向けの色域のうち、代表的な4つを紹介します。
- sRGB
- Adobe RGB
- DCI-P3
- Rec. 709/Rec. 2020
sRGB|液晶ディスプレイやプリンター、デジタルカメラなどで採用
1998年に国際電気標準会議(IEC)が定めた、国際標準規格のRGB(Red・Green・Blue)の色域です。
液晶ディスプレイやプリンター、デジタルカメラなど多くのデジタル機器や関連ソフトウェアで採用されており、とくにWindows環境では事実上の標準規格として定着しています。
また、sRGBは普及率が高いため、機器間・ソフトウェア間でのデータのやりとり時に意図しない色の変化が起きにくいというメリットもあります。
Adobe RGB|「Photoshop」のAdobeが提唱した色域規格
Photoshop(フォトショップ)やIllustrator(イラストレーター)で知られるAdobe(アドビ)社が、1998年に提唱したRGBの色域です。sRGBと色域の範囲が異なります。

sRGBと違って国際規格ではありませんが、Adobe社のグラフィックソフトが高いシェアを誇っていることもあり、とくにプロ仕様のカラー表示環境(カラーマネジメントやRGB印刷[※]などで使用される)では事実上の標準規格と言えます。
一般的な印刷物はCMYKの方式を用いて印刷をしますが、RGB印刷はCMYKに比べ発色もよく、パソコンやタブレットなどの画面により近い色合いで印刷が可能です。
液晶ディスプレイやデジタルカメラなどのデジタル機器でも、Adobe RGBの色域をほぼカバーしている製品が増えています。
※RGB印刷とは、デジタルカメラで撮影した画像やデジタルで作成したイラストなどに対し、RGBの色域で印刷をおこなう技術。
DCI-P3|映画業界で主に使用されるデジタルシネマ向けの色域規格
米国の映画制作業界団体、Digital Cinema Initiativesが2005年に策定した色域規格で、sRGBよりも広い色域を持つのが特徴です。
また、AppleはDCI-P3をベースにした「Display P3」という色域を策定しています。
Rec. 709/Rec. 2020|デジタルテレビ放送向けの色域規格
Rec.709とRec.2020はどちらも国際電気通信連合(ITU)が定めた、主にテレビ放送向けのデジタル色域規格です。
Rec.709はHD映像(1280×720ピクセル、1920×1080ピクセル)向け、Rec.2020は4K(3840×2160ピクセル)・8K(7680×4320ピクセル)向けの色域です。
また、Rec.2020は従来の映像よりも輝度の幅が広い、ハイダイナミックレンジ(HDR)映像にも対応しています。
色域と密接なかかわりのあるデジタル機器
色を表現するデジタル機器にとって、対応する色域は機器の性能にも関わる重要な要素です。色を扱うデジタル機器が、それぞれどの色域をカバーしているかを解説します。
- ディスプレイ
- デジタルカメラ
- プリンター・スキャナー
ディスプレイ
PCモニタをはじめとする液晶ディスプレイの分野では、sRGB対応が主流です。
ただし、近年ではAdobe RGBの色域も扱えるデジタルカメラが増えており、それに合わせて、主にプロのクリエイターが使用する「カラーマネジメントモニター」と呼ばれる液晶ディスプレイでは、Adobe RGBに対応しているものも増えつつあります。
デジタルカメラ
デジタルカメラの分野ではsRGBとAdobe RGBの色域が主流です。
カメラによってはsRGBとAdobe RGBのどちらでも撮影可能なものもあり、対応するディスプレイやプリンターと合わせて使用すれば、出力・印刷時の色の差異を小さくできます。
プリンター・スキャナー
紙やフィルムへの印刷は、CMYK方式の採用が主流です。
デジタル規格であるsRGBやAdobe RGBのデータを紙に印刷する場合、事前に色調整のための変換作業(カラーマッチング)をおこないます。
スキャナーもプリンターと同様、紙の画像をスキャンする場合はデジタル化に際してカラーマッチングが必要です。
デジタル機器との連携を強めるためにAdobe RGBの色域をより広くカバーするプリンターもありますが、必要なインクの種類が増えるなど、一般的な家庭用プリンターよりも高価になる傾向があります。
VRゴーグル(ヘッドセット)やARグラスのディスプレイも色域の影響を受ける

VRゴーグル(ヘッドセット)やARグラスのディスプレイは、製品ごとに対応する色域が異なります。
一般の利用者は色域の違いをあまり意識する必要はありませんが、色の表現を重視するアプリを開発する人であれば色域のことも意識する必要があるかもしれません。
たとえば、同じアプリを異なるデバイスでリリースする場合、デバイスごとの色の見え方の違いを抑えるため、個別に色調整が必要になる、といったケースが考えられます。
主なXRデバイスで採用されている色域
主要なXRデバイスが採用している色域規格と、そのカバー範囲を表にまとめました。
色域は、各色域規格のうちどれくらいの割合をカバーしているのかをパーセンテージで表します。
なお、デバイス(ディスプレイ)によっては規格を超えた色域まで表示可能な場合があり、「sRGB 106%」などと表現します。
また、「sRGB 98.9% / DCI-P3 90%」など、複数の色域で説明している製品もあります。
デバイス名 | カバーする色域 |
---|---|
Meta Quest 3/3S | sRGB 100% |
HTC VIVE Pro 2 | sRGB 98.9% / DCI-P3 90% |
Varjo XR-4 | sRGB 98% / DCI-P3 96% |
XREAL Light / XREAL Air | sRGB 106% |
VITURE Pro | sRGB 108% |
Rokid Max | sRGB 106% |