XRとは「VR」「AR」「MR」の総称ですが、その中でも「MR」に関しては、「VR」や「AR」と比べて少しわかりにくく、初心者の方には理解しにくいかもしれません。
本記事では、XRに関連する、知っておきたい用語について解説します。
MRとは?
MRとは「Mixed Reality(ミックスド・リアリティ)」の略で、日本語では「複合現実」と訳されます。
VR(仮想現実)とAR(拡張現実)をかけ合わせ、その名の通り現実と仮想の世界を複合(ミックス)したような体験ができる技術です。
MR対応のデバイスが空間マッピング※により眼の前の現実空間を認識します。そして、仮想オブジェクトをディスプレイに投影して、現実空間上に複合させて可視化するのがMRの技術です。
※空間マッピング:デバイスのカメラやセンサーが現実空間を3Dスキャンして、床や壁、机などの形状や距離感を立体的に認識する機能
例えば、自動車をMRで表示しようとした場合。
自動車を仮想オブジェクト化して、空間マッピングをした現実空間上に表示します。
するとMRデバイスを通してみた景色の中に、目の前に実物と同じサイズの自動車が再現され、さまざまな角度から自由に見ることができたり、車内の様子を確認したりすることで、本物の自動車があたかもその場にあるような体験ができます。
このように従来なら実物を用いてしか提供できなかった体験が、MR技術を用いることで代替可能となるため、主にビジネスやエンターテインメントシーンでの活用が進んでいます。
VR/ARとの違い
MRを理解する前に、まずはVRとARをある程度理解する必要があります。
まずはVRについてです。
VRは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等を用いて、仮想的な空間などを現実であるかのように疑似体験できる技術です。
そしてARについて。
ARは、あらかじめ決めておいた現実空間にある目印をカメラなどで認識し、その目印上に仮想オブジェクトや画像などを重ね合わせ、現実の世界に浮かび上がらせる技術のことです。目印を認識する方法として、マーカー型、平面認識型、物体認識型、位置認識型といった種類があります。
MRはARをさらに拡張した技術です。
目印ではなく現実空間そのものを詳細に認識し、MRデバイスを通し、現実空間に仮想の世界を違和感が無いように重ね合わせて表示(複合現実)し、現実と仮想が混じり合った世界を体感できる新しい技術です。
詳しくはこちらの記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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似ているようで違うARとMR
一見すると似ているARとMRですが、MRは空間と物体を認識しているため、奥行き情報がリアルです。MRの場合は、仮想オブジェクトの手前にリアルな物体があれば、ちゃんと物体の後ろに仮想オブジェクトが隠れます。
一方、ARはあくまでマーカーを認識しているだけなので、手前に何の物体があろうとも、上から仮想オブジェクトを重ねて表示します。
現実空間という1枚のレイヤーに、仮想オブジェクトのレイヤーを上に重ねるイメージを持つと分かりやすいでしょう。
MRの歴史
MRという概念が産声を上げたのは、1994年と言われています。
アメリカ・トロント大学のポール・ミルグラム教授は、大阪大学・岸野文郎教授と「Mixed Realityビジュアルディスプレイの分類」と題した論文を発表。
(出典:A Taxonomy of Mixed Reality Visual Displays|George Mason University)
日本では1997年、当時の通商産業省とキヤノンによる「MRシステム研究所」が設立されたほか、 基盤技術研究促進センターの出資で「MR プロジェクト」なる研究も始まっています。
(出典:Cのキセキ Episode.32 「MREAL S1」|C-magazine)
デバイスとして登場したのは、そこから少し先の2015年1月。マイクロソフトがWindows10のプレスイベントで発表したHMD「HoloLens」でした。
日本ではさらに2年弱が経った2016年12月にプレオーダーが開始し、翌年1月から順次提供を開始。その後、「Magic Leap One」「NrealLight」など、MRデバイスが続々と発売されています。
MRの事例やコンテンツ
MR技術は製造や建設の分野での活用が多くみられます。
ドイツの高級車ブランドで有名なメルセデス・ベンツは、2018年から自社のトレーニングセンターにMR技術を導入しています。
同施設は同年、前述したマイクロソフトの「HoloLens」を実に100台以上も導入。車の内部や複雑な構造が3Dモデルで確認でき、従業員の修理技術・製品知識をより効率的に教育可能にしたと注目を集めました。
(出典:How mixed reality is sparking a new vision at Mercedes-Benz Global Training|Microsoft)
実際、マイクロソフト社もこうした使い方を、公式YouTubeで紹介しています。動画内には、MRで現実空間に表示された映像を見ながら、なぞるように作業を進める工員の姿が描かれています。
エンタメ分野でもMRは活用されており、昨年10月、東京・虎ノ門ヒルズ「ステーションタワー」の最上部にオープンした「TOKYO NODE」のオープニングイベントでは、MR用HMD「MREAL X1」を用いた演出が行われました。
この様子は、「MREAL」の開発元であるキヤノンの公式YouTubeでも公開されています。
実際にMRを体験するには
MRを体験するには専用のデバイスを使用する必要があります。
ここではMR体験ができる有名なデバイスを3つご紹介します。
HoloLens 2
(出典:HoloLens 2|Amazon)
業界の先駆けだったマイクロソフト社の「HoloLens」は現在、最新モデルの「HoloLens 2」を公式サイト等で販売中。
Windows OSを搭載しており、パソコン等の周辺機器はいらないスタンドアローンタイプとなっています。
Apple Vision Pro
これに並ぶ有名デバイスが、AppleのMRヘッドセット「Apple Vision Pro」。
日本では2024年2月2日に発売し、かつてiPhoneによってスマホを普及させたように、MRも普及させるのではと期待されています。
Meta Quest 3
(出典:Meta Quest 3|Amazon)
Meta社が発売する「Meta Quest 3」はパススルー機能によりMR体験が可能です。
HoloLens 2やApple Vison Proに比べて安価で購入することができます。
購入する前に無料で試すには?
どのデバイスも高価なため、「まずは無料で試してみたい」という人は、MRが体験できるイベントを探してみることをおすすめします。
例えば大阪府が再開発を進める「うめきた2期」エリアの「グラングリーン大阪」内では、2024年9月以降にMRが体験できる予定です。
来年開催の大阪・関西万博と合わせて多くの来場が見込まれることでしょう。
このようにMRが体験できるイベントは全国各地で随時開催されているので、チェックしてみましょう。
またキヤノンITソリューションズ株式会社では、法人限定で、MRシステム「MREAL」の体験会を開催しています。
最新機種「MREAL X1」を実際に装着し、デジタルの立体イメージと現実世界を違和感なく融合した世界を自由な視点で体験できるイベントです。
▽キヤノンITソリューションズ「MREAL」体験会の詳細はこちら
https://www.canon-its.co.jp/solution/mr/demo/
法人の場合、各種展示会等でも体験の機会がある場合がありますので、MRに興味のある企業の方は、そういったイベントも合わせてチェックしてみるのもオススメです。
製造、建築、エンタメまで、幅広い分野で採用されるMR。今後もさらなる発展や普及の見込みもあり、未来を変える技術といえるかもしれませんね。