XRにおいて、「トラッキング」技術は重要な要素のひとつです。
トラッキングには、実はいくつかのさまざまな種類があり、初心者の方にとっては分かりにくいかもしれません。ただトラッキングは、コンテンツの楽しみ方に直結し、XRの没入感を大きく左右する要素のため、ぜひ知っておきましょう。
本記事では、XRに関連する、知っておきたい用語について解説します。
そもそも「トラッキング」って?
簡単にいうと、トラッキングとは「頭や身体、物の動きや位置を追う技術」のことです。ユーザーやコントローラーの動きを追い、同じ動作などを仮想空間内に反映させます。
例えば、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使ったとき、顔の向きを変えると、それに合わせて映像も変わりますよね。
この視界を「追跡する」技術が、まさにトラッキングというわけです。
トラッキングにはいくつかの種類があります。その種類についてみていきましょう。
ヘッドトラッキング
さまざまな種類がある中でも、VRを経験したことがある人で馴染みがあるのは「ヘッドトラッキング」ではないでしょうか。
これは頭の動きを感知する技術で、装着した機器のセンサーと連動し、頭に合わせて360度映像を展開することが可能です。
横を向けば横の景色が広がったり、振り向けば後方の景色が見えたりします。まさに「これぞVR」といった体験ができるトラッキング手法です。
VR対応の動画など映像コンテンツに向いており、多くのデバイスにおいて幅広く採用されています。
ポジショントラッキング
見ている方向だけが再現されるヘッドトラッキングに対し、「ポジショントラッキング」はユーザーの物理的な移動もコンテンツ内で再現することができます。
これはポジション=位置という言葉通り、デバイスの位置=ユーザーの位置を認識することで移動を感知し、その移動に映像が連動するため、よりリアルな没入感が得られます。
使用例としては、VR空間内を自由に動き回るゲームや、フィットネスといった実際に身体を動かしながら楽しむコンテンツにうってつけでしょう。
かつては位置を把握するため室内にセンサーを置く必要がありましたが、近年ではゴーグルなどに内蔵されたカメラでポジショントラッキングが可能になってきました。
またヘッドトラッキングのみ対応しているものを「3DoF(スリードフ)」、加えてポジショントラッキングにも対応しているものを「6DoF(シックスドフ)」と呼びます。
詳しく知りたいというかたは、こちらの記事も参考にしてみてください。
▽関連記事
3DoFと6DoFの違いとは?【知っておきたいXRの専門用語】
ハンドトラッキング
現在のVR業界では、手に握ったコントローラーでの操作が主流ですが、「ハンドトラッキング」では、手そのものがコントローラーになります。
以前は、手にはめるグローブ型のデバイスを用いる方式が主流でしたが、近年ではカメラで手を認識する方式が主流になっており、デバイスに内蔵されたカメラでユーザーの手や指を認識・追尾し、これをVR空間にも反映します。直感的な操作や、仮想空間内のモノに触れる・掴むといった動作までできてしまいます。
アイトラッキング
「アイトラッキング」とは、目の動きを追う技術で、デバイスの内側に搭載されたセンサーで、ユーザーの目の動きや焦点を捕捉。手前にピントを合わせて奥のものがボヤけるといった映像表現もできます。
またVIVE Focus 3アイトラッカーといった、コントローラーなしでも視線のみで操作を可能にするデバイスも販売されています。さらに現実と同じような視線の動きやまばたきなどの細かな目の動きをアバターに反映し、より人間らしいコミュニケーションが実現できます。
また、VRの欠点であり宿命でもある「VR酔い」の改善の手段のひとつとしてアイトラッキングを活用する研究も進められています。
▽関連記事
「気持ち悪いのはあなただけじゃない!」“VR酔い”は〇%が経験します!VRで酔いまくった私が語るその対策
モーショントラッキング
「モーショントラッキング」では、身体の各部位の動きを追跡することで、細かい動作の再現が可能になります。
ここで重要になってくるキーアイテムが、「トラッカー」と呼ばれるセンサーです。
両肘、両足・両膝・腰など各部位にトラッカーを着けることで、ユーザーの動きを部位ごとに検知し、全身の動きを再現できるのです。
モーショントラッキングを使えば、自分がダンスをすると、それに合わせてアバターも踊ってくれます。また、トラッカーはモノにも装着することができます。ガンコントローラーに取り付ければ銃の上げ下げまで再現され、よりリアルなシューティングゲームがプレイできるでしょう。
モーショントラッキングの中にも複数の方式が存在し、ここで紹介したものは「慣性式」にあたり、他にも「光学式」や「ビデオ式」があります。
「光学式」は複数台のカメラを使ってマーカーの位置をトラッキングする方式で、大掛かりな設備が必要となり、主に映画やアニメなどで使われています。
「ビデオ式」はマーカーを使わず、カメラを使って動きをトラッキングする方式で、スポーツ選手などセンサー装着が難しいときに遠くから映像撮影して大まかな動きを捉える場合や、VTuberがWebカメラを用いてキャラクターに表情や動きを反映させる際などに使われます。
それぞれをまとめると
ここまでさまざまなトラッキング方式を見て、技術的なことから、それぞれの強みなどが分かったと思います。
どういったコンテンツに用いられているかなどを考えると、その特色も見えてくるでしょう。
簡単に振り返ると、それぞれのトラッキング方式でできることは以下のようになります。
- ヘッドトラッキング:360度動画などユーザーの移動を必要としない映像コンテンツ
- ポジショントラッキング:ユーザーの移動を反映した体験型コンテンツ
- ハンドトラッキング:直感的な操作、コントローラーが不要なことによるリアルな没入体験
- アイトラッキング:視線による高度なコミュニケーション、現実の視界再現、視覚のみでの操作
- モーショントラッキング:手足の動きまで反映される、よりリアルな動作再現
複数のトラッキング方式に対応したデバイスを選ぶと、デバイスに表示されたコンテンツをよりリアルに楽しめるようになります。デバイスの購入時にはぜひ参考にしてください。