ARグラスやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を調べているときに主に注目するスペックとして、価格はもちろんのこと、解像度、重さ、リフレッシュレート、バッテリー容量などの項目を気にすることが多いと思います。
しかし意外と気にしていないのが「ディスプレイ方式」という項目。
ディスプレイ方式の項目には「ビデオシースルー方式」や「光学シースルー方式」などの記載がありますが、シースルーの言葉通りにスルーしてしまっていませんか?
本記事では、XRに関連する、知っておきたい用語について解説します。
シースルー方式とは
シースルー方式とは、現実の風景の上にデジタル情報を重ねて表示させるMR(複合現実)を実現するディスプレイ方式のことです。
シースルー方式は2つ
大きく「ビデオシースルー方式」「光学シースルー方式」の2つが存在します。
「ビデオシースルー方式」と「光学シースルー方式」では、現実世界の景色がどのように視界に入ってくるかが異なります。
そのためARやMRコンテンツを使用したいときなどに、気を付けておきたいポイントです。
ちなみにビデオ/光学シースルー“方式”という以外に、ビデオ/光学シースルー“型”と記載されることもあり、どちらも同じ意味で使用されています。
ビデオシースルー方式とは
ビデオカメラでリアルタイムで撮影された風景映像の上に、さらにデジタル情報を重ね合わせて表示する方式です。
主にVR用のHMDなど、「完全没入方式」と呼ばれる外部からの視覚情報が完全に遮断されたデバイスにおいて、MRを実現する際に用いられます。
ビデオシースルー方式を採用しているデバイスでは、Apple Vison ProやMeta Quest 3が有名です。
先述の通り、ビデオ撮影されたリアルタイムの映像をデジタル情報と重ね合わせるビデオシースルー方式では、現実世界の視覚情報とデジタル情報との一体感が非常に高く、ARコンテンツが目の前に表示された際に「SF映画のような近未来感」が味わえます。
なお、タブレットやスマートフォンのカメラを通して、ARコンテンツを表示する方法に関しても、ビデオシースルー方式といえます。
そんなビデオシースルー方式ですが、VR酔いや映像酔いのような現象が発生しやすくなる、という課題もあります。
リアルタイムでビデオ映像とデジタルコンテンツを合成表示する処理が必要なので若干のタイムラグが生じ、コンマ数秒の世界ではあるものの、視界とその他の体感がズレてしまうことで違和感が発生したり、動きが速い対象物に対する表示のぼやけなども発生するため、VR酔いなどを引き起こしやすくなるのです。
もう一つの課題として、映像を処理するための高い性能や、それに伴う消費電力の増加によってバッテリー容量が必要になるため、デバイス自体が重くなる傾向であることがあげられます。
例えば、ビデオシースルー方式が採用されているApple Vision Proはデバイスの本体だけで約620gあり、 さらに有線でつながる外付けのバッテリーパックが約350gもあります。また同じく、ビデオシースルー方式のMeta Quest 3もデバイスだけで約515gあります。
一般的なメガネの重量が30g程度のため、日常生活において常用するにはまだまだ重さの点で課題がありそうです。
光学シースルー方式とは
レンズ越しに肉眼で見えている視覚情報に、プリズム※やハーフミラーといった光学素子を用いて、デジタル情報を重ね合わせて表示する方式です。
※プリズム:光の入射面と出射面に角度がある平面で作られたくさび状の光学素子のこと。
ちなみに、光学シースルー方式には、網膜投影方式のものがあったり、光学シースルーを「両眼シースルー方式」と記載しているサイトもあったりします。
光学シースルー方式はXREAL Air 2やVITURE OneなどのARグラスで主に採用されています。
光学シースルー方式の良い点として、先述の通り、レンズを通して、実際の視界にAR情報を重ねるため、ARコンテンツ側にズレが生じたとしても、視覚情報とその他の器官で知覚している情報がずれることがなく、VR酔いや映像酔いしにくいことがあげられます。
また、「XREAL Air 2」はデバイス本体の重量が約72g、「VITURE One」もデバイス本体の重量は約78gとどちらも比較的軽量です。
メガネなどと比べると倍の重さはあるものの、ビデオシースルー方式のデバイスに比べるとかなり軽量と言えそうです。
一方で、ディスプレイの映像と肉眼で見ている景色との画質の違いがはっきりと表れやすく、ARコンテンツが現実世界となじみにくいため、没入感という点ではまだまだ課題があり、SFのような近未来感は、ビデオシースルー方式に比べると若干劣ってしまいます。
また、現実世界の明るさに負けて、ディスプレイの映像が暗く見づらくなってしまうため、透明なメガネのようなレンズではなく、サングラスタイプのレンズのデバイスが多いという点もデメリットとして挙げられます。
今回はデバイスのディスプレイ方式について、解説しました。
ぜひ、XRデバイス購入の際は参考にしてくださいね!